● 患者傷害法の一考察 ●

カール・エスペルソン
(2000年8月発表;筆者はスエーデン患者保険協会法律顧問)



患者傷害法

この法律は1997年1月1日に発効し、基本的に任意患者保険の賠償規則に基づいているが、いくつか重要な変更がある。

この法律には患者傷害賠償金を得る権利に関する規定と、この賠償金を補う患者保険を医療機関が維持する義務に関する規定が書いてある。各医療機関はどのような形態であっても、患者保険に加入することが要求されている。

この法律には患者保険が満たさねばならない必要条件が示されている。この条項は被害者の利益のために、強制である。しかし、各保険会社が被害者にもっと都合の良い条件を自社の患者保険に補足するのは差し支えない。

保険業者は患者障害賠償金を支払う。医療機関が保険加入の義務を果たしていない場合に患者の利益を保護するため、患者保険に加入していない医療機関が関与している傷害に対して、すべての保険業者には共同及び個別に賠償金を支払う法的義務がある。これらの患者傷害保険業者は「患者保険組合」に加入することが要求されている。この組合は保険未加入の医療機関に関する賠償金問題を処理することになっている。これは交通事故による傷害に関する制度と似ている。「自動車保険業者局」が同様の役割を担っている。

患者傷害賠償金支払いのための必要条件の一つは、その傷害がスエーデン国内の医療機関に関連して発生していなければならないことである。スエーデン国外で治療されている患者は、医療機関による任意の取り組みによって保険の継続が可能である。

この法律は1997年及びそれ以降の患者傷害を償っている。1997年以前に発生した傷害は、もしその医療機関が以前の任意保険に加入していたならば、その任意保険で取り扱われる。

補償範囲

医療機関
医療に従事するものはすべて患者保険加入が義務付けられている。「医療」には救急車及びその他の患者輸送形態が含まれる。

患者
賠償のための必要条件の一つは、当人が患者であったことに関連して、その当人に起こった傷害で無ければならないと言うことである。「患者」とは自分の健康状態に関して医療要因と接触関係を樹立しているすべての人々を意味する。介護、治療、診察を受けた場合、受診の理由に関係なく、当人は患者と見なされる。「患者傷害法」では医学的研究に自発的に参加する被験者、及び移植などの医学的目的で臓器または生物素材を提供する者は誰でも患者として扱われる。

患者傷害

人身侵害の定義
傷害の定義の大部分は任意患者保険制度に用いられた定義に基づいている。しかしながら、いくつか重要な変更が加えられている。そのうち最も重要なものの一つは、新しく導入された人身侵害の定義に身体的傷害と精神的傷害の両者が含まれていることである。任意患者保険で賠償が提供されたのは身体的傷害だけであった。精神的傷害に対する賠償は、身体的傷害によって生じた場合に限り賠償される。

証拠に関する規定
傷害が賠償されるためには、傷害と医療行為の間に因果関係が存在しなければならない。患者にはこの因果関係を証明する重責がある。因果関係が圧倒的確率で成立することが要求される。

 

   


[ TOPICS ] [ NEWS ] [ 医療裁判報告 ] [ KENYA ] [ HOME ]