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信じるものは救われる、か?
寄り添う医療とは?


さくらいクリニック 桜井 隆

 Aさんはいっさいの治療を拒否した。手術や放射線、抗癌剤はもちろん、痛み止めやモルヒネなど痛みをやわらげる緩和ケアもすべて。呼吸困難に対する酸素吸入さえも最初はいやがっていた。そして彼と家族が受け入れたのは”身体の免疫力を高める水”という民間療法だけだった。

2度の手術と抗癌剤治療に耐えて肺癌と闘ってきた彼にまたしても再発の知らせはとても大きなダメージだったに違いない。そしてもう一度手術と抗癌剤、でも治癒する確率は20%と伝える医師に「先生、すまんけどもういいです、”末期癌から絶対に生還する免疫力を高めるすべての条件がととのった水”だけを飲んでがんばります、悪いけどいっさいの治療は受けない。」と治療を中断してしまった。

「どうせダメかもしれないということはわかっている、でも残された時間を絶対に治る、という希望を持って過したいんです、ですから好きなようにさせてください。」ある種信仰とも思える彼の思いは強かった。
そして肺癌の進行と共にしだいに襲ってくる痛みや呼吸困難に対してもいっさいの薬を拒否してその水だけを飲みつづけた。さらなる積極的治療を受けない、という選択には納得した医者や看護師たちもモルヒネなどすべての痛みや苦しみを緩和するケアも拒否する彼にはほとほと困り果てていた。

なんとか痛みに対するモルヒネだけでもといくら勧めても彼は決してうんと言わなかった。そして最期までその水だけを支えに痛みに耐えて亡くなっていった。
「本当にわがままばかり言って申し訳ありませんでした、でも私達にとてはあの民間療法だけが希望の光りだったんです。」と亡くなられた後御挨拶に来られた奥様に、 彼のことはおそらく一生忘れない、これから患者さんや家族の希望に寄り添う医療を考えていく上でいろんな意味で勉強させていただいた、感謝しているとお伝えしました。

 

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