在宅ケア
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在宅緩和ケアのための地域連携ガイド  2008 12
(厚生労働省科学研究費補助金 がん臨床研究事業
「在宅医の早期酸参加による在宅緩和医療推進に関する研究」

第3章在宅緩和ケアの実際 
在宅療養支援診療所のモデルケース

外来―在宅 ミックス型診療所の視点から
  先発ー完投型の在宅ホスピスケア
〜看取りのソーシャルキャピタルの再生のために〜


 
さくらいクリニック 桜井 隆


空間的、時間的 すきま と医療難民
 
 先発、中継ぎ、ストッパーと分業がすすみ、一試合を3―4人で投げるのがあたりまえになった野球と同じように?医療の現場でも専分化が進んでいる。内科、外科、整形外科、そして呼吸器、循環器、消化器さらに、上部消化管、下部消化管、肝胆、膵といった臓器別に。こういった空間的専門化だけでなく時間的な専門化、すなわち予防、治療、そして終末期のケアをそれぞれ診療所、専門病院、ホスピス病棟、あるいは在宅専門クリニックが担当するようになっている。こういった空間的、時間的に多元化する医療システムの中でそれぞれの連携がうまくいかないために、その“すきま”に落ち込んでしまう人達が“難民化”しているともいえるだろう。救急難民、癌難民、そして死亡難民。ベッド数削減、在院日数削減といったきびしい医療経済政策の中で、途方にくれて行き場をなくしてしまう。そんな医療難民を救う手立てはないのだろうか?

先発―完投型 家庭医をめざして

 ヘビースモーカーのAさん60歳、会社の検診の胸部X線で異常を指摘されて、近くのBクリニックへ。肺癌疑いでC癌センターに紹介、確定診断の後、手術、抗癌剤、放射線療養を受けて退院、社会復帰、しかし3年後再発、転移。『これ以上の積極的治療は困難』と病院医師に宣告され途方にくれる。そんなAさんに寄り添って伴走するのが街の家庭医だ。臓器別、時期別の専門医ではない「あなたとあなたの家族の専門医」。なれない海外旅行に付き添う添乗員のように旅行者の希望を優先し、効率的そして安全にエスコートする、医療の現場にそんな存在としての家庭医がいるといい。Aさんに日常の風邪診療やインフルエンザの予防接種、禁煙支援からかかわり、その延長線上で、癌と向き合うAさんをサポートする。専門病院への紹介、癌治療の専門医と患者、家族の間に通訳として介在して双方の理解を助け、治療をスムーズに運ぶための触媒となる。そして、もうこれ以上積極的治療は困難、という終末期には、患者、家族の感情のよき理解者として、隣人としてサポートできる、そんな家庭医が、外来診療の延長としての在宅ケアを担当できれば素敵だ。
 患者が癌末期、という自己のアイデンティティの崩壊の危機に立たされた状況で初めて医療者に出あう、というのではなく、日常の関係の中でのケアの継続が可能だ。そしてAさんが願うなら、終末期をホスピス病棟ではなく、住み慣れた家で過ごす在宅ホスピスケアという選択肢があり、それを自然にサポートできる、ということだ。Aさんの体調次第でクリニックへの外来通院が困難となってきそうなら、家庭医が往診すればいい。そして、訪問看護師、ケアマネ−ジャーという在宅ケアの仲間達に応援をたのめばいい。
在宅ホスピスケア、なれない間は癌性疼痛、症状緩和にちょっと腰がひけてしまうかもしれないが、ある程度予測される症状への対応は、いくつかのマニュアルがあればたぶんOKだ。麻薬は保険所に届け出るだけで、院外処方で入手可能だし、あちこちの勉強会、あるいはMLなどで緩和ケア専門医のアドバイスを得ることもできる。そんな在宅ホスピスケアがスタートして気が付いてみれば、基本的には連携の中心となる、という在宅療養支援診療所の要件を自然に満たしているに違いない。文書化して契約となると物ものしいが、実際に行っていることは、まさに、在宅療養支援そのものといえるだろう。

ときどき在宅療養支援診療所

 届け出さえしておけば、在宅療養支援診療所としてのコストの算定は可能だ、そこでまたあなたは考えてしまう。3割負担とすれば患者負担が高くなってしまうのでは? そういった善良な医師が多く、在宅時医学管理料、ターミナルケア加算の算定はいまだに少ないという。もちろん届け出しても算定するか否かは要件を満たすかどうか、で医師サイドの判断となる、在宅療養支援診療所として届け出ていても、すべてに在宅時医学管理料、ターミナルケア加算を算定する必要はない。でも考えてみよう、ターミナルケア加算10万円でも3割負担で3万、社会経済的に周辺のコストと比較して、決して高価とはいえないだろう。
 たとえば冠婚葬祭、葬儀や、戒名代と比べて。葬送関連費用は平均でひとり200万強、という、それにくらべて、医師が連携に基づいて一人の人間の最期を支える在宅ホスピスでの医療費は、決して高くないだろう。

ソーシャル・キャピタルとしての看取りの再構築

 そんな 外来―在宅 ミックス型の診療所の看取りが増えるといい。もちろん専門的に在宅ケアを展開し、ハイテク在宅や、重症、困難例を引き受けてくれる地域の橋頭堡としての在宅専門クリニックの存在は必要だ、そういった在宅専門クリニックと連携しながら、かかりつけの患者さんを中心に年間5―10名を看取る、そんな街の診療所が全国で2万あれば、さらに10―20万人を家で看取りことができる。そしてそんな先発―完投型での在宅ホスピスケアに慣れてきたら、たまには、ストッパーとして、9回からの登板、病院などからの紹介で、地域に帰ってくる患者さんのケアを担当してみてもいい。
 在宅療養支援診療所での看取りが約2万強、その一方でおそらくその数倍の人がそうでない医療機関で看取られ在宅死している現状を考えると、在宅療養支援診療所という制度、契約がなくても従来どおりのケアで十分看取りはできている、という事だ。制度やコストだけで、死に逝く場所さえも誘導しよう、というのは所詮無理がある。あなたが願うなら、最期は住み慣れた家で過ごす、という選択肢があり、それをサポートするさまざまなシステムが地域にある。ソーシャル.キャピタルとしての看取りの文化を再構築する、そんな役割の一部を街の診療所が果たせるといい。

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