まちかど診療日記
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変えられないから生活習慣病?    
さくらいクリニック  院長 桜井 隆

 
 土曜日の診察にやすこさんの息子、正樹さんがやってきた。彼は26歳、商社の営業マンで毎晩遅くて話をする機会もない、とやすこさんがこぼしていたのを思い出した。聞くと会社の健診でひっかかって検査をすすめられた、ということだ。

「これがその検査結果です。」 正樹さんが取りだした検査結果、日付は2カ月ほど前だ。
「尿酸と肝機能ですか。尿酸が8.2。肝機能のγGTPが108、少し高いですね。 でも検査したのは、、2カ月前、あれ、去年の健診でもひっかかってますよ。」
「そうなんですよ、それが忙しくてなかなか来れなくて、、まあなんの症状もないから大丈夫かなあと。母さんが一度見てもらえ、、てあんまりうるさいもんだから」
「症状があんまりないのがこういった生活習慣病の特徴ですよ。」
「生活習慣病?」

「そう、以前は成人病、と言ってた高血圧、糖尿病、高脂血症、痛風なんかですよ。」
「ええ、そうゆうのはもっと年上、40,50歳の人の病気だと、、」
「うーん、たとえば50歳でアルコール性肝炎や糖尿病、通風の人が25歳、30歳の時にどうゆう生活をしていたか想像してみてください。40歳からいきなり不摂生始めたわけではないでしょう、30歳のころからそうゆう予備軍としての習慣はついている。それが積み重なって、、ところでお酒はどのくらい、?」

「え、お酒は嫌いで、ほとんどビール、ワインかウイスキーで、まあほんの少し。」
「少しって?人によってはビール5本がほんの少しだったりするんで。」
「ほとんど外食で、よおわかりませんが、まあビールなら4ー5本。」
「アルコール抜きの日は?」
「それはまずありません。寝る前には必ずウイスキーを、、」
「お仕事は週休2日でしょ、肝臓も週に最低2日ぐらいは休ませてあげないと、、アルコールの代謝は肝臓にとって徹夜の残業みたいもんですから、、そのうち肝臓が倒れてしまう、、それに尿酸値も高めですし、そのうち痛風発作がでますよ。」

「痛風発作、、こないだ先輩がなってましたが、あれは痛いらしいですね、、発作のあとはなんかアルコールひかえておとなしくクスリを飲んでましたが、最近はもとどおり飲んでますね、痛風、もう治ったんかなあ。」
「のど元過ぎれば、、というやつですね、痛風はそう簡単には治りませんよ、忘れたころにまた発作がやってくる、、正樹さんも気をつけないと。」
「それじゃあ、とりあえず肝臓と痛風のクスリ下さいよ。」
「クスリのんで安心して酒を飲もう、、というんでは?そうじゃなくてまず酒を減らさんと、、」

生活習慣病、これはなかなかやっかいだ。
まあ簡単に変えられないから習慣、というんで、ちょっと医者に言われたぐらいで変えられるんなら誰も苦労はしない。日常の生活習慣がそのまま病気に結びつく、しかもそれは気がつかないうちにやって来る、というのだから。まあそのうちにアルコールを減らせばいいや、今日はちょっと忙しかったし、まあいいか、飲もう。なんて毎日思っているうちに5年、10年すぐに経ってしまう。そうゆう人はたとえば電車に乗るとき各駅停車じゃなくて特急に乗ってしまったようなものだ。

「この特急列車は終点の生活習慣病駅まで途中の駅には止りません。御注意ください。」とアナウンスされているのに乗り込んでしまって、途中でおりれるさ、と列車から過ぎて行く駅を眺めている、、気がついたときには終着駅。
「まもなく発車いたします。扉がしまります。駆け込み乗車は危険ですからおやめください。次は終点の生活習慣病駅。次は、、、」ほら、あなた、今ならまだ降りられるかもしれませんよ、急いで下さい。  

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