最近よく心のケア、という言葉を聞く。いろんな事件や災害で体だけでなく心まで傷ついた被害者やその家族の方を精神的な面からもサポートしようという試みだ。PTSD、心のトラウマ、なんていう専門用語もマスコミで見かけるようになってきた。ある限度以上の心の傷を負うとそれが後々までいろいろな問題を引きおこす、という考え方だ。
21世紀は心のケアの時代た、とも言われる。医療業界でも心のケア、スピリチャルケアといったことに注目が集まってきた。確かに心身ともに傷付いた患者さん達にとってただ病気を治すだけでなく、落ち込んだ気持ちを癒す心のケアは大切なものに違いない。特に治癒がむずかしい癌末期の患者さんにとっては。
でも本当に我々医者やナースにそういった心のケアができるのだろうか?またそんなにたやすく心に踏み込んでいっていいのだろうか?
身体の病気そのものの治療にしたって医療に”おまかせ”にしていたのではあまりうまくいかなかったことは皆さん御存じにとおりだ。最近その反省から患者さんが情報を共有して自己決定していくように変わりつつある。
在宅ケアを始めたある癌患者さんの奥さんが「入院中は本当に癒されなくてつらい思いをしました。」という事をおっしゃったので「あまり医療に癒しを期待するのも、、?」とお話ししたら、「そんなレベルの問題じゃないんです、、、主治医が勧める積極的手術をお断りしたとたん、手のひらを返して”あんたら家族は御主人を見殺しにする気か”と説明書に”死”という文字を大きく書いて見せた、、」という。
こういった心ない行為は医者として、というより人間として論外だが、医療にはあまり期待しない方がいいのかもしれない。
患者さんや家族がいろんなことに邪魔されない、、そんな環境を設定して患者さんやそれをささえる人たちが落ち着いて心のケアに集中できるような状況を作る、それがまず医療に求められる最低条件ではないだろうか。そしてそれが当たり前にできる様になって初めて心のケアについて語る資格があるのだと思う。
|