まちかど診療日記
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私の診療話法・コミュニケーションづくり

医療経営情報 No.102/1998年2月号より
      発言者:医療法人一歩会ペインクリニック小笠原医院   院長:小笠原一夫
          さくらいクリニック              院長:桜井 隆

 ■ 在宅療養に入るにあたって

「私は経験があって上手だから任せてください」(小笠原)

 在宅療養に入るときの家族の不安は、家で急に何か起こるのではないか、もとの入院先と縁が切れるのではないか、痛みの治療はできるのか、お金がずいぷんかかるのではないか、告知をしないと診てもらえないのではないかーというもの。それぞれ、24時間体制でいつでも電話をしてもらってかまわないこと、人院先には必要なら手配すること、痛みについては専門だから任せてもらっていいこと、費用は保険が利くことなどを説明する。なかでも、告知については聞かれたら答えるし基本的に嘘はつかないことなどを伝える。
 ガン告知は、100%言わないでくれという家族はほとんどいない。ただ、みな悩んでいる。言ってしまいたいが、そのあと患者がパニックを起こさないのか、と。そこで「私に任せておきなさい」と言うのだが、こう言うと倣慢に聞こえるかもしれないが、“告知”という言葉に対して構え、迷っている家族に、言葉を飾らずにそのまま話したほうが伝わりやすいことがある。「私が引き受けるから」という意味で言ってあげるのである。

告知でできないのは二次告知、余命についてである。」(桜井)

 当院の場合、在宅療養に人る患者のほとんどが近隣の公立病院で手術を受けるなど、診断と治療を受けた人たちだ.手術時にはある程度はガンの告知を受けている方も多くなったが、高齢者ではそれもなされていないことがある。問題は、余命の予告ができていないことだ。しかし、もともとの病院主治医がそれをできてないときに、私がその主治医と家族の間に割って入っていきなり言うことはできない。家族もそれを望んではいないことが多い。
 それでも、もちろん患者本人には聞かれたら嘘はつかないことにしていて、働きかけてもいるのだが、私の力不足か質問を投げかける人はこれまでいない。こうした実情を認めつつ対応をとればいいのであって、医師の考えを押し付けてはいけない。

「生きる希望を失わすに、90%治って生き抜こうというほうに頑張ってほしい。しかし、10%はそうでないことも考えてほしい。ガンの患者さんはすぺて死にます。ガンでない患者さんもすべて死にます」(小笠原)

 余命については、聞かれても答えきれない。せいぜい「少なくとも年の単位ではないですね」といった言い方だ。しかし、大事なのは、死はすべての人の前に平等であるということを気づかせる点だ。死を恐れてはいるが、なかなか気持ちを表現できずにいる。それを口にしていいんだという状況をつくっていくことが必要だ。


 医者と患者の相性が悪いこともあるから、そう思ったときには言ってください」(桜井)

 療養に人るにあたって、家族には望むのであれば病院に人院もできるし、在宅でも、苦しくなったら点滴もあるし、酸素療法もできることなどを伝える。なかでも、痛みのコントロールはかなりのことができるので任せてもらいたいということははっきり言う。
 一番問題なのは、家族が強迫観念に思うほど、最後まで家で看なけれぱダメだと押し付けること。さらに、最後まで私が主治医である必要はない旨を伝えるのも大事だ。外来受診は、その医療機関ゃ医師が気に入らなかったら行かなければいいのだが、在宅療養の場合には、一度定期的な訪問が始まると、気に入らなく、ても断わりづらいものだからだ。そのような雰囲気を感じ取り、家族の側の腰が引けていると思ったらこちらも少し引いてみようという気持ちが必要だ。ターミナルに限らず、在宅の場合にはサービスを受ける側は引っ越さない限り逃れられないのだから、医療提供者側の配慮が大切である。

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