まちかど診療日記
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「暮らしと健康」

かかりつけ医から患者さんへ

さくらいクリニック 院長 桜井 隆


専門家とのより良い関係を

 いろいろなことが進歩、発展した20世紀、それぞれの分野で”専門家”という存在が必要となりました。
日常生活そのものが自給自足、自己完結では成り立たなくなって、いろいろなことを専門とする多くの人達の助けが必要となっています。その中でも医療は特に専門性の高い分野で、専門家である医師におまかせするしかないという時代が長く続きました。
 しかし、がまんしてだまって治療を受けていればなんとか治った結核など感染症が主な病気であった時代は過ぎ去り、21世紀の高齢化社会では生活習慣病や癌といった本人の生き方そのものにかかわる病気が主流となってきました。おまかせして多少の不自由はがまんすれば、、というわけにはいかなくなっています。
 ところが医学といった専門性の高い分野ではなかなか理解して自己決定する、ということは困難です。そこで専門家である医師の助けが必要となります。本来、専門用語と一般用語の両方を理解するある意味で”バイリンガル”である医師が、初めて病気や障害といったトラブルを経験して困惑する患者さんに付き添ってわかりやすく通訳し、本人が望む医療を納得して受けられるように支援するのが理想の医療です。
 しかし一般的に専門家と一般人が対峙する局面、インターフェイスでは、あたかも異文化、言語や宗教を異にする二つの世界の関係のように、なかなかスムーズにいかないのが世の常です。以前は表に出ることのなかった、そういた局面でのきしみが、明らかになってきているのが最近の傾向ではないでしょうか?インターフェイスでの摩擦をなくすには、お互いが相手の立場にたって対話を続ける、それしかありません。

おばあちゃんの初めての海外旅行

 たとえば、商店街のくじ引きで思いもよらず一等の海外旅行を当ててしまったおばあちゃん。冥土のみやげに、とおっかなびっくり生まれて初めての海外旅行に少しは英語が喋れる孫娘が付き添って行く、そんな感じでしょうか。おばあちゃんがスムーズに旅行できるように同行して、航空機、ホテルの手配から現地での通訳まで面倒をみるといったイメージで患者さんと医師が協同作業としての医療を行っていく。
 特に身近で患者さんに接する街の家庭医としてはそういった付き添う、寄り添う、といった感じで支援できればと思います。
 医師が専門用語を連発して、専門家であることの優位性にあぐらをかいていばったり、患者さんが専門家なんだからまかせておけばいいはずだ、なのに、どうして良くならないんだ、とお互いがそんな態度では上手くいくはずがありません。どんな旅行にもトラブルの可能性があるように、医療行為自体が完璧というわけではありません。
  さまざまなリスクや良くない結果についても患者さんと医師がすべての情報を共有した上で前向きに考えていく、そんな相互理解の上に行われる医療が人々の生活に密着した「生、老、病、死」のそれぞれの局面をふわっと支えることができるのだと思う。

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