まちかど診療日記
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  一般医の do and don’t

一般開業医が診察室でそろえるべき処置器具
〜軽微な外傷への対応〜

JIM 2005、6月号 外科系疾患に遭遇した時(医学書院)
さくらいクリニック 院長 桜井 隆


 内科系のプライマリケア医、家庭医にとってちょっとした知識と器具の使用で外科的疾患の初期治療が可能となる場合がある。特に在宅ケアの現場や福祉系施設内では軽微な外傷などで即座に外科医、整形外科医への紹介受診や往診依頼が困難な場合も多く、その場での外科的処置が必要とされることもある。もちろ
ん守備範囲を超えた深追いはかえって合併症を招くなど危険であるが、適切な処置で対応可能なことも多い。
どこまで外科的処置を行うかは個人の経験、外科系医療機関へのアクセスが容易かどうかといった環境、医療機関の設備やスタッフの力量、そして通院が可能か、在宅での対応が望ましいか、さらには患者、家族の要望などさまざまな因子によって左右され一律ではない。その場の状況に応じた臨機応変な対応が求められる。
外科的処置の基本、創傷治療に関しては最低限どのような処置器具があればいいだろうか?

挫創

 ”へたに縫うより、SSテープか被覆材による閉鎖療法”
挫創(外力により皮膚が損傷したもの)を縫合するかどうか、の判断に迷うことも多い。(その判断が外科的処置の第一段階ではあるのだが。もちろん骨折や神経損傷の有無にも注意。)筋層に達するような創であれば縫合は必要だが、感染さえおこさなければ多くの軽微な挫創は、SSテープ固定や被覆材を使用し湿潤環境を保ちwound healingを促進することで十分治癒する。初期治療で最も大切なことは十分な洗浄(水道水でOK)による異物の除去で、創面への消毒剤の使用はかえって組織障害を助長するだけで必要ない。 縫合が必要な場合29Gなど細い針を用いて0.5%、1%キシロカインで浸潤麻酔し(キシロカインゼリーやスプレーでの代用場合によっては可))四肢なら4ー0、5ー0、顔面なら5ー0、6ー0の針付きナイロン縫合糸を用いて縫合する。ピンセットはアドソン有鈎摂子が組織を保持しやすい。縫合後表皮の欠損が残れば被覆剤で被うが、通常はガーゼ保護でOK。SSテープを用いる場合は創傷周囲の皮膚を乾かした後に創に直角にやや創縁を寄せるようにしてテープを貼る。縫合後の消毒も意味がなく、48時間経てば縫合部は上皮化するので洗浄して差し支えない。
抜糸は創を観察しながら顔面で5ー7日、四肢なら7ー14日後。抜糸後数週SSテープ固定を追加すると瘢痕が残りにくい。動物(ヒトを含む)の咬傷は感染の可能性が高く、開放創のまま治療した方がいい。
幼児の挫創では、むりやり押さえ付け局所麻酔しての縫合は患児や保護者の精神的負担やリスクの割にきれいにできないことも多く、SSテープやアルギン酸による止血、ハイドロコロイドによる閉鎖療法で十分きれいな創傷治癒が望める。また治癒後の瘢痕も縫合糸の跡が残ることを考えるとテーピングや被覆剤使用の方がきれいである(特に顔面)。

”止血にはアルギン酸”
海草の昆布から抽出されたアルギン酸塩(ソーブサン、カルトスタット)は強力な止血効果があり、指尖部の出血などにアルギン酸をフイルムドレッシングで
密封して圧迫すると止血しやすい。抗凝固剤使用時の出血などにも有用である。

擦過傷

 擦過傷は水道水洗浄後、ハイドロコロイド被覆剤で覆うことでかなりきれいな治癒が期待できる。高齢者に多い表皮が剥離したような傷も、はがれた表皮を可及的にもとの位置に寄せて軽くSSテープで固定し、被覆剤で被う。処置翌日の観察は必須であるがその後は2ー3日に一度の洗浄、交換で十分で患者自身によるセルフケアも可能である。慣れないうちは毎日創面を観察して治癒過程をチェックさせてもらった方がいい。最近は安価なハイドロコロイド被覆剤やアルギン酸が市販されており、医療用創傷被覆材と同様の治療効果がある。


熱傷 

 表皮のみの損傷である1度の熱傷は冷却、水道水での洗浄後、リンデロンVG軟膏などの塗布で十分。熱傷が真皮層まで達し、水泡形成を特徴とする「度の熱傷では、患部の冷却、洗浄の後、ワセリン基本の軟膏やプラスチベースを塗布し、ラップで覆うことで治癒が期待できる。ガーゼで創面を覆うと剥がすたびに再生しつつある上皮細胞を剥離し、出血する、おまけに痛い。感染に対しては外用の抗生剤使用では感染抑制効果は期待できず、内服や筋注、静注による抗生剤血中濃度の上昇が必要である。

褥創

 在宅ケアを行う場合、対策が必要となる。基本的に圧迫と皮膚のずれによっておこる仙骨部、座骨部、踵骨部の褥創は、エアマットなどによる除圧をおこない抗生剤投与で感染をコントロールできれば、洗浄してラップ等で覆う”ラップ療法”が処置も簡単、安価で効果が期待できる。

参考)褥創のラップ療法  http://www.geocities.jp/pressure_ulcer/
これからの創傷治療 夏井 睦 医学書院


創傷諸処置に使用する器具、材料

 消毒剤(穿刺や切開など健常皮膚を経て体内に侵入する際の皮膚の消毒にのみ使用すべきで、創面には使用しない。)
消毒用アルコール
ハイポエタノール(ヨードや付着した血液の脱色に有用)
イソジン(多少割高ではあるか、イソジン液含綿棒を1本ずつアルミ箔 でパックしたポピコットン棒もある)

綿棒、綿球(綿球が16mmと大きい方が使いやすい、パックやディスポ容器に少量ずつ入った滅菌済綿球もある)
手術用手袋、ガーゼ
ステリストリップテープ、マイクロポアテープ
持針器(ダイヤチップ付きの全長130ー145mmの小さいものが使いやすい)
アドソンピンセット(有鈎) 縫合時の組織の保持に
外科ピンセット(無鈎)綿球をはさんで消毒などに使用、クリップで保持すれば、置いておける 
刺抜きピンセット(尖端のとがったもの、刺や異物除去に便利)
(ディスポのピンセット類もある)
糸付縫合針(4ー0、5ー0、6ー0ナイロン、エチロン等)
はさみ(小さい眼科剪刀、細部用剪刀が使いやすい)

ドレッシング剤
 ポリウレタンフィルムドレッシング材(オプサイトウンド、テガダームバイオクリーシブ)
 ハイドロコロイドドレッシング材(ディオアクティイブET、CGF、コムフィール)
アルギン酸塩被覆剤(カルトスタット、ソーブ酸)

市販の被覆材(薬局、ドラッグストアで販売)
BANDーAID キズパワーパッド(ハイドロコロイド)
BANDーAID クイックヘルプ (アルギン酸)

デジタルカメラ(創傷の治癒過程の記録)


Q。創傷に対して、ガーゼ、消毒は必要ですか?
A。創傷の治癒とは損傷された表皮の再生を促すことである。表皮細胞の再生には乾燥や、消毒剤は有害であることは言うまでもない。従って表皮の欠損部に
はガーゼ、消毒剤は使用せず、水道水で十分洗浄後、ハイドロコロイドなどの被覆剤でおおって湿潤環境を作ることが創傷の早くて痛くない治療である。
Keyword:創傷治癒、湿潤環境、被覆剤

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