1.疾患の概要と初診時のポイント
関節リウマチ(RA)は自己免疫異常に基づいた関節滑膜の炎症によって関節軟骨や骨自体が破壊され全身多関節の疼痛、腫脹、変形、そして関節機能障害をおこす慢性炎症性疾患で、関節外の臓器障害(血管炎、肺繊維症、腎機能障害等)を来すこともある。
起床時の手指のこわばり、疼痛、腫脹といった関節症状、あるいはそれに伴う全身倦怠感、微熱、易疲労感、リンパ節腫脹、体重減少、手指のレイノー現象等を初発症状としてプライマリケア医を受診することが多い。初発時の関節症状は両側性でなく片側のみの単関節炎のこともある。手関節、MP、PIP関節の腫脹、疼痛が多いが、肩、膝、足関節や、顎関節といったところから発症するケースもある。(DIP関節のみの腫脹、変形、疼痛の場合は変形性関節症、ヘバーデン結節であることが多い。)
RAの有病率は0、5〜1%で、1000人当たり女性5、2人、男性 1、1人(平成10年厚生労働省)とされる。
2.診断、検査の進め方
RAには特異的な臨床症状や検査所見がないため、診断は比較的特徴的な症状や所見を組み合わせた分類基準(表1)に基づいておこなわれる。したがって、プライマリケア医を受診する初期段階では確定診断は容易ではない。多くが白黒はっきりしないグレーゾーンに位置する、といってもいいだろう。鑑別を要する疾患を考慮しながら経過観察する、といったケースも多い。
更年期障害の症状としての関節痛、浮腫や使い過ぎ(Over use)による腱鞘炎、筋肉痛、変形性関節症による疼痛等を関節リウマチ、と思い込み、インターネット等でいろいろ調べて将来は人工関節、寝たきりという悲劇のヒロインのストーリーにはまりこんでしまい“リウマチノイローゼ”となって医療機関を点々と受診する患者も少なくない。健康診断や、受診した医療機関でたまたま調べた、RA因子や、抗核抗体、MMP―3が陽性で、医師からリウマチの疑いがある、などと言われるとその不安は加速する。(これらの検査は健常人でも数%陽性)RA因子陽性=RAではない、検査結果だけで白黒はっきりするのではないことを十分に説明する必要がある。
また、精神的な過度のストレス(家庭内、職場でのトラブル、あるいは医師との関係の問題など)がRA発症の引き金となったのでは、と考えられるケースも見られるため、そういった心のケアの部分にも配慮する姿勢がプライマリケア医には求められる。
3.関節のみかた
特に内科系医師にとって、関節の診察は苦手意識もあっておろそかにされがちのようだ。「痛いというところを、見も、触りもしてくれなかった。」と前医の不満を訴えるリウマチ患者も少なくない。確かに得られる情報は検査、画像所見に比べて少ないかもしれないが、目の前の患者の訴えは、「関節が痛い」ということだ。痛いと訴える関節は必ず、見て、触って、できれば動かしてみて疼痛、圧痛や腫脹の程度、関節可動域制限などを診る習慣をつけておきたい。時間がなければ衣服の上からでも関節を触ってみることだ。またどのような日常生活動作に支障をきたしているのか(ペットボトルのふたが開けられない、缶ビールをプルアウトできない、ヘアブラッシングやメイク、調理がしにくい等)といった生活上の機能評価も必要だ。
1) プライマリケアで診られる状態とその処置
XP検査
初期にはXP写真上RAに特有の関節周辺の骨びらんや関節裂隙の狭小化などが見られることはまれであるが、OA変化や、偽痛風による石灰化等との鑑別と患者の安心のために手関節など疼痛関節のXP写真は必要である。
血液検査
CRP、血沈、リウマチ因子(RAテスト、RAPA,抗ガラクトース欠損Ig G抗体)、MMP−3(matrix
metalloprotease3)などが指標となる。
CRP、血沈は炎症の程度を表すが、偽痛風や化膿性関節炎などでも上昇する。経過を通じてCRPが陰性であれば、RAの可能性は低い。
RA因子はRA患者でも10―20%は陰性で、健常人女性での陽性例もあることに注意が必要。
滑膜細胞で産生される蛋白分解酵素で軟骨破壊にともなって上昇するMMP―3は早期RAの診断や関節破壊の予後予測に有用とされるが、他の関節炎でも上昇するため注意が必要。
2) 何を指標にどのくらいの頻度で経過を診るか
初診時にRAの診断基準を満たさず、CRPも陰性―弱陽性なら、消炎鎮痛剤の内服や湿布、軟膏などを処方して経過観察する。患者の訴えや関節痛、朝のこわばり、ADL障害等を見ながら1―2週間隔で診察、1か月毎に血液検査を行う。
4―6週の経過観察で多関節痛が続き、RAの診断基準(表1)あるいは早期リウマチ診断基準(表2)を満たす場合は、積極的に抗リウマチ剤の投与が必要となる。RA治療の最大の目標は骨、関節破壊の予防であり、そのためにはできるだけ早期にRA治療を開始し、免疫異常の是正、炎症抑制、関節破壊、機能
障害の予防のための治療が必須である。消炎鎮痛剤、少量のステロイド剤に抗リウマチ剤を用いた早期の寛解導入が必要となる。
日本リウマチ財団診療ガイドラインでの推奨A(行うように強く勧められる)の抗リウマチ剤はリウマトレックス メトトレキセート(MTX)、アザルフィジンEN サラゾスルファピリジン(SASP)、リマチル
ブシラミンである。
またステロイド剤内服は、NSAIDsのみで疼痛の緩和が困難、DMARDsの効果発現までの間や患者QOLの維持、といった場合にプレドニン換算で1日10mg以下にめどに日常生活を維持するのに必要最低限の使用は推奨されている。(ガイドライン推奨A)もちろん長期投与による感染誘発、骨粗鬆症、糖尿病、白内障、緑内障といった副作用には注意が必要で、できるだけ減量するようにつとめる必要がある。
3)患者立脚視点でのRA治療評価
治療効果の判定に関しては検査所見など医療サイドからの客観的評価だけでなく、VAS(Visual Analog Scale)やフェイススケール、AIMS、HAQ、SF―36といった身体機能評価など、患者自身の満足度も考慮する必要がある。
4) 専門医への紹介のタイミング
それぞれのプラマリケア医の経験、力量、置かれた環境にもよるが、早期診断に自信がない、また患者の不安が強い場合は、RA診断がつかないグレーゾーンの時期に、あるいは早期RAの診断がついた時点で、抗リウマチ剤の選択など治療方針についてリウマチ専門医へ紹介が望ましいだろう。特に初期より20関
節以上の腫脹、CRP高値、RF因子高値、若年発症は予後不良で早期の治療開始が必須である。抗RA剤の効果は個人差が大きく、副作用のリスクも高く
(MTXの間質性肺炎、骨髄抑制は時として致死的)併用療法などその使用には知識と経験が必要である。最近はレフルノミド、タクロリムスといった新しい免疫抑制剤や、関節破壊の阻止、改善を目的としたサイトカイン療法(インフリキシマブ、エタネルセプト)も次々と承認、保険適応され、早期に積極的に治療して寛解導入を目指す方向へとRA治療戦略は大きく変わりつつある。
初期治療がスタートした後は患者、専門医と相談の上治療方針が決定し、状態が安定した時点で通常の定期検査などをプライマリケア医で行い、年に数回の定期受診や、症状悪化時、抗RA剤の変更、手術などが必要な際に専門医にコンサルトする、という連携も可能だろう。
RA治療においてプラマリケア医は早期に専門医への道筋をつけ、最新治療の恩恵を受ける機会を逃さないようにアドバイスする必要がある。
#予後、患者家族への説明
RAの診断は初期では確定しにくく、はっきり診断できない場合も多いが、そういったケースでは長期的に見ても重症となる可能性は少なく、万一RAであったとしてもコントロールは十分可能であること。しかしコントロールするには専門医との連携による長期の治療継続が必要となること。新しい治療が次々開発されており、関節破壊を防ぐことも可能となっており、RA=将来寝たきり、では決してないこと、近い将来、完治も夢ではないことなどを説明する。
30―50歳代の主婦が多いため、家族の疾患に対する理解と支援も必要。高額になる医療費に対する社会資源の紹介(高額医療費の補助精度、可能なら身体障害者手帳の取得など)や、患者会としてのリウマチ友の会の情報、情緒的支援も有用なことがある。
また、専門医を受診、RAではないと診断されたものの、やはり関節が痛い、こわばる、といった症状を訴える患者に対しては、心理面でのバックアップをしながら、RA、その他の膠原病への進展の可能性を常に念頭におきながら寄り添う姿勢でのフォローが、プライマリケア医には求められる。
(表1) 診断基準;ACR(米国リウマチ学会。1987)
- 朝のこわばり(少なくとも1週間)
- 3関節以上の腫脹(6週間以上)
- 手関節または中手指節関節(MP)または近位指関節(PIP)の腫脹(6週間以上持続)
- 対称性腫脹
- 手のX線所見
- 皮下結節
- リウマトイド因子 (7項目中、少なくとも4項目あればRAと診断される。)
1〜4は少なくとも6週間持続しなければならない2、5は医師の観察による
(表2) 早期リウマチの診断基準(日本リウマチ学会、1994)
- 3関節以上の圧痛または他動運動痛
- 2関節以上の腫脹
- 朝のこわばり
- リウマトイド結節
- 赤沈20mm以上の高値、またはCRP陽性
- リウマトイド因子陽性
以上6項目中3項目以上を満たすもの
この診断基準に該当する患者は詳細に経過を観察し、病態に応じて適切な治療を開始する必要がある
#鑑別を要する疾患
腱鞘炎、関節痛(使い過ぎ、Over useによる)
ウイルス感染による関節痛(インフルエンザ、パルボウイルス、風疹、肝炎、流行性耳下腺炎、結核性関節炎、ライム病 等)
SLE、PSS、MCTD、ベーチェット、リウマチ熱、偽痛風、リウマチ性多発筋痛症、腸炎に伴う関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎、、回帰性リウマチ、全身性変形性関節症等
参考)
・関節リウマチの診療マニュアル 日本リウマチ財団
・リウマチ基本テキスト 日本リウマチ財団
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