まちかど診療日記
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”家族、の意味するもの”

さくらいクリニック 桜井 隆


  在宅ケアや、住み慣れた家での看取り、といったことを論じていると必ずでてくるのが“家族”ということだ。でもいったいここでの家族とは誰のことを指しているのだろうか?当たり前のように配偶者、子供、孫、兄弟、といった関係を思い浮かべるあなたにとっての家族、は我々がいままで社会通念として捉えて来た家族の概念ではあろう。しかし地域が、村が、部落が崩壊してしまい家族が崩壊しつつある21世紀の今、かつての“家族”という概念はおそらく意味をなさなくなりつつある。
 それでも“家族”というものにこだわるのなら“家族”の定義自体を変える必要がるだろう。「肉親」といった狭い意味から「あなたにとって大切な人」という広い意味へと。

 胃癌の切除はうまくいったけど腹壁ヘルニアで、おなかがぽこっと飛び出しているのをとても気にしていた画家のAさん、いつも心配そうにつきそってきたのは、奥さんではなく同年代の男性。とっても親密そうなお二人の様子を私を含めて周囲はちょっと好気の目で見ていたようだ。いよいよ末期となってしまい、在宅ケアを始めることになっても主たる介護者は彼だった。とても親身に在宅ケアを支える彼の姿勢はなまじ惰性で関係をつづける配偶者や、逃れられない血縁関係ゆえの家族のなおざりなケアとは比べ物にならないほど心のこもったすばらしいものだった。

 家族=あなたの大切なひと、としないことにはなりたたない世界がそこにはある。一人暮らしのひと、家族がいても疎遠なひと、家族がいない方がましというひと、私の大切な人が世間一般では認めてもらえない関係にある、そんな人達にとって既成の家族の概念は自らの存在を否定するものでしかないだろう。
そんな広い意味での家族に対しても我々はしっかりサポートする必要がある。どんな国でも、人口の5―10%はゲイやレズビアン、性同一性障害といわれている。そういった人達の存在を認めることはたとえば違った宗教を持つ人の存在を認めることであって、決してあなたもその生き方、その宗教を信じる、ということではない。そんなふうに“あなたの大切なひと”といった広い意味での“家族”の存在をささえるケアができればいい。

 

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