まちかど診療日記
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診察室でのコミュニケーションもマニュアル化?
神戸新聞掲載第10回 9月8日 より
さくらいクリニック 院長 桜井 隆
 患者さんとのコミュニケーションが難しい、と若い研修医達が悩んでいると聞きます。我々町医者にとっても、日々の診療での日常業務になっているとはいえ、診察室でのコミュニケーションには苦労することが多いものです。最近は医者がこういった患者さんとのコミュニケーションをトレーニングするためのマニュアル本も増えてい ます。アナウンサーを講師に招いての話し方教室や、”模擬患者”といって患者役の人を相手にインタビューの方法や、説明の仕方を練習するといった試みを医学部の授業に取り入れるところも多いと聞きます。

 20年前、私が研修医だったころはそんな試みは皆無で、先輩医師達の診察を見よう見まねで習っていただけでした。もちろんその頃は医者に任せておけ、というスタ イルの診療が主流で、患者さんとのコミュニケーションなんてあんまり考えてなかったような気もしますが。

 これから育ってくる若いドクター達はいろんな意味で洗練されて、コミュニケーショ ン上手になってくるのかもしれません。ところが、こういったトレーニングで上達するのは型どおりのマニュアルの部分が主で、どうしてもコンビニの店員さんのような ありきたりな対応に終始してしまうのでは、と危惧します。もちろん、現状では我々医者の対応はコンビニの店員さんより劣っていることも多いようで、そのレベルまで上達できれば、患者さん達ももっと気持ちよく診療が受けられるでしょう。

しかし医療現場では緊急時や、生死にかかわる場合など真剣勝負の機会が多くなります。「できるだけ延命治療を、」という家族、「もう死にたい、終わりにしてくれ」という本人、「お願いだから先生、娘を助けてください、」とすがる家族、「あなたの処置は間違っていたのではないか、どうしてくれるんだ、」と迫る患者。そんな時もマニュ アルだけで対処しきれるでしょうか?

真剣勝負の場面で最後に頼れるのは、それまでに培ったひとりの人間としての感性でしかありません。最低限のマニュアルはきちんとマスターした上で、医者が一生で遭遇するおそらく何万人もの患者さんとのコミュニケーションの中で人間としての感性 を磨かせていただく、そんなインタビューが診察室でできればいいな、と思っています。
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