肺癌が見つかって、しぶしぶ入院したたつじいさんの検査結果について息子さんから電話がかかってきた。病院主治医の話によるとどうも進行していて治療はむずかしい、ということらしい。
忙しい主治医とはゆっくり話ができなくて、様子がよくわからないので聞いてみてくれないか、という依頼だ。
こういった通訳みたいな役割も町医者、家庭医の大切な仕事だ。さっそく病院に出掛けて行ってたつじいさんをお見舞い。自分の病気のことより、ショートステイに入所しているうめばあさんを心配している様子。その後で付け足すように「どうもよおないようですなあ。」とひと事のようにつぶやく。
帰りにうめばあさんの様子も見てくるからと、その場をしのいで、忙しい病院主治医をなんとか捕まえて話しを聞く。検査では少し貯まった胸水からも癌細胞が発見され、肋骨や腰椎など骨への転移もあって、積極的治療はむずかしい、病院ではあまりできることはないので早めに退院してはとのこと。
うーんと頭を抱えて しまった。以前からせきをしていたヘビースモーカーのたつじいさん、もっと早くに説得して検査しておれば、、とくやんでもくやみきれない。とにかく今後の方針を御家族と相談する必要があります。本来は中心であるはずの御本人をそっちのけにして
家族や医療者がどうしようか、と相談しているのは本当はおかしな話、本人の意向も尊重しないと、、。
ところで病院でもう治療方法はありません、と言われると見捨てられた、と思ってしまう患者さんが多いようです。確かに進行した末期癌や根本的な治療方法のない難病などでは、病気を治してもとどおり健康な状態にすることが不可能なことも。しかし積極的な治療はできなくても、いろんな症状をやわらげ、残された人生を有意義に過す方法はいくらでもあります。
癌の末期の痛みや苦痛にたいしてもモルヒネを始め、さまざまな方法で緩和することができます。なにもすることがないのではなく、いくらでもできることはあるのです。でもこういった緩和ケアは得意な病院とそうでない
病院がありますから、そういった使い分けは必要でしょうが。たつじいさん本人や家族とも相談してみないといけませんが、できるだけ自宅でうめばあさんと一緒に残された時間を過せるように支援できればと思います。