まちかど診療日記
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モルヒネを誤解しないで、、
神戸新聞掲載第19回 2月23日 より
さくらいクリニック 院長 桜井 隆

 癌の痛みの治療に使われるモルヒネが日本では今だに欧米の1/7程度しか使われ ていない、と以前このコラムで書いたことがありましたが、不思議なことにこのモル ヒネの使用量が日本国内でもかなり地域差があるのです。県別の人口当りのモルヒネ 使用量を見ると、概して東高、西低です。兵庫県や大阪府も全国平均以下、かなり低 い方です。関西人はがまん強い?とはとても思えませんがなぜなのでしょうか?

 日本で癌性疼痛に対してのモルヒネの使用量が先進国中最低なのは、医者にも、一 般人にもまだまだモルヒネに対する誤解、危険な麻薬で習慣性があって使うと命を縮 める、という誤った認識があるせいだとされています。癌の疼痛コントロールに関し てはWHO(世界保健機構)のガイドラインがありそれに添って、時刻を決めて、効 力の順に痛みに応じて段階的に、患者ごとの個別の量を適切に使用すれば安全に癌末 期の痛みを緩和することができます。

 モルヒネを使う時、私は患者さんに次のように説明します。「小学校の時の理科の 実験で、リトマス試験紙というのがありましたよね、酸性なら赤、アルカリ性なら青。 たとえば酸性を癌の痛みとすれば、モルヒネはそれを中和するアルカリ。ちょうど中 和されて透明な状態が痛みもない安定した状態です。痛み、酸性が強ければアルカリ のモルヒネを増やして中和する。そういった状態と考えてください。」

 もちろん吐き気や便秘、眠気といったモルヒネの副作用への対策も忘れてはなりま せん。これをきちんとしないと副作用のためにモルヒネが使えなくなってしまいます。 さらにモルヒネが効きにくい痛みもあります。神経に癌が直接浸潤しておこる痛みな どです。これにはさまざまな鎮痛補助薬が使われます。適切な緩和ケアが行われれば、 癌末期の痛みはほとんどコントロールできるといっていいでしょう。最近は座薬や貼 り薬、飲みやすい液体の薬もあって在宅でも癌末期の痛みのコントロールは十分可能 です。もちろん患者さんの痛みにはこういった薬では対応できない、心の痛みという ものがあることを忘れてはなりません。御本人や御家族などまわりの方がよけいなこ とを気にしないで、こういった心の痛みにしっかり向き合えるような環境をつくるの が我々医療者の役割だと思っています。

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