病気や障害を持っていても住み慣れた家で過したい、と積極的に在宅での療養を望 む方が増えています。そしてそれを支援する医療、介護のシステムも少しずつ充実してきています。口から食べられなくなった方に行う胃ろう(胃カメラを使った簡単な
手術で腹壁から胃へ直接チューブを通して栄養剤を注入する方法)や高カロリー輸液、気管切開、在宅での酸素吸入や人工呼吸器といったさまざまな医療行為が在宅でも医
師や訪問看護師の支援で可能になってきました。 しかし在宅の現場でいろいろな医療 行為をどの職種がどこまで行うのか、たとえばヘルパーが痰の吸引を、あるいは看護
師が点滴や採血をしてもいいのか、といった問題が今まではあまり表立って議論され ていませんでした。ましてや家族のかかわりに関しても。
病院で医療者が管理してきた医療行為を在宅で行うにはいろんな危険が伴います。緊 急時に医療者がすぐに駆けつけられるとは限りません。そんな時に身近にいる家族が
どこまで対応できるか、が鍵となることもあります。たとえば、気管切開のチューブ がつまったとき、家族が吸引したり、場合によってはチューブを引き抜くといった緊
急処置ができるかどうかで、救命できるか否かが決まってしまうかもしれません。在宅での医療行為に関しては器機の構造や使い方を普段から本人や家族が知っていて、緊急時にある程度対応できた方がいいのでは、と思っています。それは在宅でこういっ
た器機を使って生活なさっている方にとっては、器機の処置はある意味で一般の方の 救命救急処置にあたるからです。しかしこういった医療行為をいくら家族とはいえ、
一般の方がするということは事故の場合の責任の所在など法的問題もあり、一概に勧 められないのも事実です。在宅ケアにかかわる医師達の間でも、こういった家族の医
療行為に関しては賛否両論です。
在宅での医療行為は普段元気な人にとっては全く関係ないことのようですが、将来延 命処置をどうするか、食べられなくなったときにいろんな方法で栄養補給を受けるか
どうか、といった事前指定、リビングウイル等と密接にかかわってきます。こういっ た問題はマスコミでは、何か事件、事故が起こった時に取り上げられ、なんとなくマ
イナスのイメージからスタートして議論されることが多いようです(たとえば安楽死 の問題でも)。そうではなく、日常生活の延長線上にあって誰にでも起こり得ること、
として普段から皆で前向きに考えていきたいものです。