まちかど診療日記
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常識変えるキズの治療

神戸新聞掲載第33回 10月11日 より
さくらいクリニック 院長 桜井 隆

 10月は運動会の季節、でもけがの多い時期でもあります。転んで手足をすりむいた子供達がたくさん保健室を訪れていることでしょう。このすりりキズの処置といえば、消毒してガーゼを当てるというのが昔からの定番でした。消毒液がしみて痛い、さらにぱりぱりに乾いたガーゼを剥がす時にまたキズから出血して痛い、という経験は誰にでもあると思います。
ところ痛みなく早く傷を治す方法があるのです。「消毒しないこと、とキズを乾かさないこと」たったこれだけです。

 とにかくけがをしたらきれいに水道水で洗い流します。そのあと消毒したくなってしましいますが、しみるだけで意味がありません。家庭の救急箱にある消毒液は、ばい菌を殺しますが、それ以上にキズを治そうとする体の反応、ばい菌を殺す細胞やキズを治して皮膚をつくろうとする細胞も殺してしまうからです。敵、味方関係なくやっつけてしまう絨緞爆撃のようなものです。

 その後、ガーゼではなく、薬局で売っている皮膚被覆剤(ハイドロコロイド)や食品用のサランラップやなどでやさしく覆うだけでいいのです。キズがじくじくするのは、 ほとんどの場合、傷をなおそうとする成分を含んだ液がしみでてくるからで、ばい菌が入って化膿しているからではありません。
通常、1日1ー2回、水洗いして張り替えるだけでほとんどの傷はきれいに早く治ってきます。深くて縫う必要がある場合や、傷の周囲がどんどん腫れて熱をもってずきずき痛い、といった感染の可能性もありますので基本的には医療機関を受診した方がいいのはもちろんですが。

 昔から踏襲されていることを無条件に信用してやりつづけることが、決して正しいとは限りません。
ですが誰でも長年、行ってきたことの否を認め、あらためるのは苦手なもの。日進月歩で新たな治療法が生まれる医療の世界だって例外ではありません。
地動説を唱えて天文学に新しい時代を築いたコペルニクスのように、勇気ある一握りの人が地道に訴え続けることでしか、長年築かれた専門家の牙城を崩すことはできな いのかもしれません。消毒しないキズの処置はまさに既製概念を覆すコペルニクス的展開。一度やってみるとその素晴らしさがよくわかります。

この方法の詳細は(http://www.asahi-net.or.jp/~kr2m-nti/wound/) で紹介されています。

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