まちかど診療日記
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支援の輪「点」から「面」へ 、

神戸新聞掲載第35回 11月15日 より
さくらいクリニック 院長 桜井 隆

 台風23号、新潟中越地震、とても深刻な災害が続いています。援助にも行かないで、勝手な批評をすることがいかに無責任で、実際に被害に会われた被害者の方にとっては腹立たしいことか、それは阪神大震災の被災者として認識しているつもりです。

当時、取材のヘリコプターから見た被災地の惨状を「温泉の湯煙のようです」と評したTVキャスターがいました。この言葉に必要以上に反発したのは、今、思うと被災者としてのやり場のない怒りをマスコミにぶつけたのかもしれません。悲しみに打ひしがれる被害者の涙を執拗に追いかけるカメラ、被害者を誹謗、中傷しかねないプライバシーの暴露。被災地、といわずどんな場面でも被害者に対するマスコミの報道姿勢に関しては常に批判がおこります。

 しかし10年前と明らかに違う点があります。インターネットや携帯電話の普及で、マスコミを通すだけでない被災地の個別情報が全国に発信できるということです。たとえば被災地を訪問する政治家を取材するマスコミの車両に阻まれて、救援物資を届ける車が避難している人たちに近付けない、そんなTVの画面には写されない現状がインターネットでは伝わってきます。

 医療関係者の間でもインターネットによる情報交換が効果を発揮しています。自ら被災者でありながら懸命に被災地での診療を続ける医師の支援のために、インターネットで情報を得たメール仲間の医師が必要な物資を持って交代で駆け付ける、といった「ピンポイント」の援助が可能になっています。もちろん被災地の復興には地域社会全体に対するシステマティックな支援が必要です。しかし被災直後は組織だった支援はなかなかむずかしく、個別の援助の方が効果的かもしれません。

 こういった『点』の支援を増やして『面』につなげていく、そういったボトムアップの手法を行う方が被災地の実情にあった臨機応変な支援が可能かもしれません。 ボランティア活動、という視点でみるとまさに阪神大震災の経験が活かされているようです。全国から数多くのボランティアが支援に参加しています。

 しかし医療、福祉といった資格を必要とする領域での支援は、責任の所在を明らかにしなければならないなど課題が多く、なかなかスムーズに機能していないとも聞きます。医療、福祉という資格や規制に縛られないで必要とする人に適切なケアをする。このことは被災者のためだけでなく、日常のケアでも大切なことです。

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