まちかど診療日記
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心のケアって誰のもの?
神戸新聞掲載第5回 6月9日 より
さくらいクリニック 院長 桜井 隆
 最近よく心のケア、という言葉を聞く。いろんな事件や災害で体だけでなく心まで傷 ついてしまった被害者やその家族の方を精神的な面からもサポートしようという試みだ。

PTSD、心のトラウマ、なんていう専門用語もマスコミでよく見かけるようになってきた。ある限度以上の心の傷を負うとそれが後々までいろいろな問題を引きおこす、という考え方だ。

医療業界でも心のケア、スピリチャルケアといったことに注目が集まってきた。確かに心身ともに傷ついた患者さんにとって病気を治すだけでなく心のケアは大切なものだ。
特に治癒が困難な癌末期の患者さんにとっては。

でも医者やナースなら誰でも心のケアができるのだろうか?またそんなにたやすく他人の心に踏み込んでいっていいのだろうか?
体の病気の治療にしたって医療にすべて”おまかせ”にしていたのではあまりうまくいかないこともある。最近その反省から患者さん自身がすべての医療情報を理解した上で自己決定するように変わりつつある。
ところがこれがなかなかむづかしい。

在宅ケアを始めたある癌患者さんの奥さんとの会話。
「入院中は本当に癒されなくてつらい思いをしました。」
「あまり医療に癒しを期待するのも、、?」
「そんな問題じゃないんです、、いきなり主人と二人で呼ばれて”残念ですが、余命はあと3ヵ月、もう打つ手はない、もうすぐ歩けなくなるし、急に吐血や下血して、 そのまま、、という危険も、、”と一方的に宣告されてしまって、、」

確かに真実を隠さず伝えることは大切だが、こういった”悪い知らせ”伝える方も伝えられる方もまだまだ不慣れだ。この御家族にとっては医師の知らせそのものが心のトラウマになってしまったようだ。そして病気との闘いだけでなく、医療者との関係そのものがストレスとなってしまった。

どのようにしたらうまく伝えることができ、そして受けとめることができるのか?まだまだ試行錯誤の段階だ。とにかく心のケアに関しては医療にはあまり期待し過ぎな い方がいいように思う。

患者さんや家族がいろんなことに邪魔されないで落ち着いて自分達の心のケアに集中できる、そんな環境を設定することがまず医療に求められる 最低条件だろう。そしてそれが当たり前にできる様になって初めて心のケアについて語る資格があるのだと思う。
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