まちかど診療日記
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悲劇の病気ストーリー、、その意味は?
神戸新聞掲載第7回 7月21日 より
さくらいクリニック 院長 桜井 隆
 初診の患者さんとの診察室での会話、どちらも緊張する一瞬です。
ふつう初対面の人どうしは時候の挨拶など、当たりさわりのない世間話しをしているうちに、なんとな く相手の雰囲気がわかってきたりします。ところが診察室ではそうはいかない。痛みや苦しみをかかえた患者さんとそれに対峙しようとする専門家としての医師、いきなり本題、病気に関してのインタビューとなります。

体の不調や悩んでいることを相手に伝えるという作業が実は結構むづかしいもの。いつからどんな症状があってそれがどう変化してどのように生活に影響して、、ということをまとめて伝える。特に体調の悪い時は考えもまとまらないし、ましてや初対面 の医者の前で緊張しています。まなじ自分がどんなに困っているか、ということを伝えたいがために”悲劇の病気ストーリー”となってしまう方も。

「先週、町内老人会の旅行に行きましてな、いや実は行きたくなかったんですけど、隣のつるさんが是非一緒に行こうって一生懸命さそうもんやから、しかたなくついて行ったんです、そこでお参りしたお寺の階段で、膝が痛くて階段は手すりを持たんと 昇られへん、と言うつるさんの荷物を一緒に持って立ちあがろうとしたとたんに、、 、」 腰が痛くなった、、という症状がこんなストーリーで語られたりします。

ところが治療にあたる医者が知りたい情報は、転倒など外傷があるのか、それまでに腰痛はあったのか、動いたら痛いのか、寝てても痛いのか、下肢への痛みがあるのか、何か治療中の病気があるのか、、といったこと。痛みなどの症状を医者は病気の表れとしてだけとらえようとしますが、患者さんにとっては自分の生活や、ひょっとして人生をお びやかすのではないだろうか、といった深い意味があったりします。

たとえば同じ腰痛でも、人それぞれにとって特有の意味があります。このまま寝たきりになっ家族に迷惑をかけてしまうのでは、、癌の転移で手おくれではないだろか、、患者さんの”悲劇の病気ストーリー”は直接病気の治療には関係ないように見えても実はその方にとって体の不調がどんな意味を持っているか、を知る上で大きな鍵となることもあります。

ところが実際の診療現場では医者の方に時間的にも精神的にもとてもゆっくりそのストーリーを聴いている余裕はないのが現状です。限られた時間の中で医学的に必要な情報を聞き出し、さらにその症状がその方の生活や人生にどのように影響を及ぼしているのか、そういったことまで上手に聴き出せればいいのですが、 、。
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