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第4.5号合併号   NEWSLETTER   大阪地域医療ケア研究会   2003年10月17日発行


 
▼患者にわかりやすい医療について(2)
  小畑 宜寛(医真会オーディット機構 課長) http://www.ishinkai.or.jp/
「病院における医療情報の開示について」

オーディット機構について
 当法人の理事長は、以前から医療事故に対して何とかしたいと思いがあり取り組んでおります。院内でも医療事故だけでなく、医療における質を担保するために、客観的な評価をする仕組みをつくりたいということで、企業における内部監査というものを病院の組織の中に持たせ、病院の中での内部監査という役割で医真会オ−ディット機構が位置づけられております。
 しかし、医療・病院においてこのような取り組みが初めてなものですから、どのようにすれば出来るのかというところから始まっております。その取り組みとして、医療の提供が上手くいかなかった事故やエラーについてどうだったのかと検証を加える仕組みから、まず始めて行こうという状況です。

医真会の概要
 当グループは、医療・福祉の複合組織です。今から15年前に総合病院が大阪府八尾市の八尾空港の南に開設された374床の病院です。その後、リハビリテーション病院、老人保健施設、診療所、訪問看護・介護のセンター、社会福祉施設のケアハウスがあります。
 当法人としてはグループの中で、医療と福祉を複合して地域の皆さんに提供していく機関でありたいと思っております。本日は、中心的役割である総合病院での取り組みについてお話しさせていただきます。

総合病院の概要
 374床、職員数約460名、2.5:1のA加算で、平均在院日数が18.8日(2002年)で最近はもう少し短くなっております。臨床研修指定病院です。診療科は、心臓内科・外科から救急部まで、いわゆる総合病院であります。入院患者数が平均330名、外来が約800名です。2002年7月に医療評価機構の新評価で更新いたしました。手術件数年間、2,000〜3,000件ちかく行っております。

医真会での患者の権利と責務
 2002年7月の病院機能評価の更新を契機に、『患者権利憲章』を制定いたしました。患者さんの権利は当然ですが、患者さんの責務ということもお願いしております。内容は、6項目の権利と4項目の責務です。特徴的な内容として、10条にある『患者さんは、受けられた医療に対しその対価を速やかに支払う責務があります。』と制定しております。これは逆に言うと、医真会の医療従事者には、対価に値する治療や看護を提供しなければいけないと自分たちに対する戒めでもあります。

患者の権利とインフォームド・コンセント
 患者さんにわかりやすい医療をどんな権利でどのような仕組みで実践しているのかについてご説明いたします。『インフォームドコンセントのガイドライン』と『診療録に対する規約』で、カルテ開示に関するルールです。
 まず、1枚目に患者さんに対する権利について掲載しており、その権利を保障するために、当院での『インフォームド・コンセント』の概念について載せております。私どものインフォームド・コンセントの概念は、『患者さんに説明し、同意、理解、納得していただく』ということで、一部ですが下記のように明記しております。

<わかりやすい説明>
・診療の開始から終了までの全工程で診療情報を逐次解説することで、理解・納得し同意を得る
・具体的には
 A.現在考える病名・病状(鑑別診断を含む)
    また確定診断に至ったときはその正確な病名
 B.予定している治療計画および治療方針 (投薬・検査・手術および日程など)
 C.他の治療法
 D.予測される経過および合併症
上記のものを各部署・各診療科に配布し、このようなインフォームド・コンセントを心がけてくださいということで、まだ教育をしている過程です。

患者さんにわかりやすい説明
 スライドは、各診療科が色々と工夫し、取り入れているものです。わかりやすい説明ということで、絵を使ったり、文書をたくさん載せて、特に手術や検査については時間をかけて説明しております。説明する場合は医師だけでなく、看護師も同席し、患者さんがわからない専門用語などは理解できる表現に変えたり、説明を付け加えたりと医師だけでなく、職員全員でわかりやすい説明を患者さんに提供しようと努力している過程です。

治療への参加
 患者さんにも治療や検査の経過を知り、ご自身が健康を管理することで治療への参加を促すために、外来患者対象(1997年)に診療手帳をお配りしております。これは中河内の中で、地域の医療を円滑に進めるために導入し、検査や投薬内容などを記載して患者さんにお渡ししておりますが、まだまだ地域の医療機関で利用していただくというところまで至っておりません。
 入院患者さんにも自己管理カルテ(1996年)を導入しております。現在は、ほとんどの入院患者さんにファイルをお配りし、「入院の目的」、「検査内容・検査予定」、「日計表」などを書き込む欄があり、早く情報を提供・開示していき、ご自身で可能な限り日々のバイタルなどを記入し、健康についての意識を高めていただくようにしております。これは、情報を早く提供することによって、患者さんご自身が医療事故に対して、自分で防ぐような役割を担っていただくことにも繋がっております。簡単に申しますと、事前に聞いていた検査や投薬が違っている場合に、患者さんが「そんな投薬や検査は聞いていない」と気がついて指摘していただいく。私どもは患者さんが最後のリスクマネージャーという風に位置づけていきたいと思い、情報提供を率先して進めております。退院する患者さんにもご希望される場合にはお配りしております。

患者さんからの声
 以上のような取り組みをしていても全てが上手くいくわけではありませんので、医真会の治療や説明に対して患者さんの不満や声を聞いていくために、各フロアーの詰め所に「皆さんの声」というボックスと記載する用紙(院長宛て)を置いており、患者さんが思った事を書いていただき投函できるようにしております。これらの患者さんの声を毎日回収し、それらの内容を院長に代り整理・監査するのが監査機構の役割となっており、院長と当該部署に配り解決方法を立てて、エレベーター横などの掲示板等にお知らせしております。
 「皆さんの声」 2001年:128枚
           2002年:147枚

内訳として若干激励の言葉もございますが、多数 が「ここが足りない」などのご指摘となっており、これらの声は全てデーターベース化して、1年ごとに報告しております。 下記は、全面開示ということでカルテ開示の請求があった件数です。ただ、13件につきましては若干、納得のいく治療が受けられなかったなどの理由によるものがあります。
 「診療録開示」 2001年:13件
            2002年:13件


 私どもでは、普段からわかりやすい説明を心がけておりますが、患者さんにとって不利益が生じた。もしくはそのような印象を持たれた事に関しましても、積極的にわかりやすい説明をしようということでカルテを開示して、他の医療機関にもご相談して下さいということも含めて行っております。この治療について納得できないという声が私どもに来ますと、それについて病院の中で内部検討した結果を書面にて患者さんにお知らせいたします。その書面と開示した記録を持って、他の医療機関にご相談されるというようなことで、医真会での治療の内容について客観的な意見を求められるセカンドオピニオンという仕組みも取り入れ行っております。

まとめ
 今日の医療は、患者と医療提供者が協働し情報を共有することで成り立つ。このことを実現するためには、「わかりやすい説明」「患者の治療に関する主体的参加が重要」ということで、チーム医療が大事だと叫ばれておりますが、チーム医療の中に必ず患者さんが入っていないといけないと考えております。まず、スタートラインがあり、ゴールに向かって患者さんや医師も含めた医療従事者が一列に並び、そのゴールを目指そうという考えを医療側が持ち、それを患者さんに伝えていくことが大切ではないかと考え、実践していきたいと考えております。


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