医療事故調査会


医事関係訴訟委員会への要望書
■医学的鑑定に関する要望書

平成13年7月16日

医事関係訴訟委員会 御中

〒581-0036 大阪府八尾市沼1-41
医療法人 医真会 医真会八尾総合病院 内
医 療 事 故 調 査 会


医学的鑑定に関する要望書


 医療事故調査会は1995年4月に任意団体として発足した。以来、調査会では 463件の医学的鑑定を同僚審査の手法でもって行ってきた。医療裁判においてはその案件の診療プロセスの妥当性、診断の正しさ、治療の妥当性と結果としての患者被害の関連性を中心として審理される。裁判官、両代理人(原告側も通常は弁護士である)はもとより医学的には非専門家である。弁護士の中には医師免許を併せ持つ人もいるが、それは基本的な医学的素養があるというレベルであり、当該案件についての最新の専門家的判断が可能であるということではない。従って、裁判の過程で浮かび上がってきた論点としての診療項目について専門家に医学的評価を委ねることは正当な作業である。過去の医療裁判でも医学的鑑定が行われ、それが裁判官の判断に大きな影響を与えてきたことは疑いがない。
 医療事故調査会として過去6年間の鑑定作業及び証人尋問などの裁判審理への参画の経験を基に日本の医療裁判における鑑定についての一定の指針を提案し、今後の医事関係訴訟委員会等への要望としたい。


医療事故調査会の実績から見た医療裁判における医学的鑑定の特徴

1. 医師としての同僚審査は提示された症例の全体的な「診療プロセス管理」を原則的に、また標準的診療指針に基づいて個々の診療段階の詳細を検討し、総合的な評価を行うことである。残念ながら今もって日本では医師間での「同僚審査」はタブー視されている面があり、医療裁判での医学的鑑定も公平な審査ではなく、偏ったアプローチと結論で終始していることが少なくない。

2. その結果、裁判所鑑定、あるいは被告側鑑定では科学的同僚審査というよりも、最初に「明日は我が身」「同じ医師仲間」「うらまれたくない」等の被告側に有利になるような「バイアスのかかった医学的評価」がそれなりの形式をもって提示されることが頻繁に見られる。これは医療事故調査会で行っている鑑定のような客観的な第三者による科学的同僚審査とは根本的に異なる。実際、被告側あるいは裁判所鑑定の証人尋問にて鑑定と尋問の内容が大きく異なった例も少なくない。これは上記のようなバイアスのかかった見方によって代理人の希望する鑑定事項に個別に回答するために、表現が断片的であり、課題を一連の経緯としての診療プロセスから切り離して評価して、意図的に異質な結論を導こうとするためである。

3. 臨床は前向きの診療プロセスが土台であるから、結果から前向き作業の是非を問うことは医学的な重要性とは別に医療裁判では恣意的な誤判断を招くことがある。即ち、病理診断が重篤であった為に誰が治療しても改善させることは困難であったといった結論が導かれることがしばしばあるが、誤った診療プロセスの結果としてそのような重篤な状態に至ったという解釈がなされないことは科学的正当性を欠く議論である。

4. 『当時の医療水準』という言葉が被告側鑑定では良く用いられるが、そのような場合は殆どが「被告の誤診療は当時のレベルでは仕方が無かった」というニュアンスをこめて使われている。しかもそれは科学的根拠がないか、あっても無視されていることが多く「法廷操作」としての用語である。また、関連して知識の不足、技術の未熟を医師の裁量として容認している場合すらある。


現在医学的鑑定に関して、鑑定人推薦委員会方式が提案されているが、医療事故調査会としては、以下の内容を提案する。

1. 裁判所による鑑定は複数とする

2. 鑑定書は閲覧開示し、公開する。鑑定書集は提出され次第定期的に刊行する

3. 裁判所による指名鑑定承諾は医師などの義務とする

4. 鑑定人の必須条件は卒後10年以上、当該臨床経験5年以上とし、それを証 明させる

5. 独立して、関連最新テキスト・論文を収集し、標準を示す機関を後置する

6. 鑑定した内で悪質な事実があった場合には処罰対象とする

  尚、同文は最高裁判所事務総局民事部第一課長 林 道晴氏、法務大臣 森山眞弓氏、最高裁判所長官 山口 繁氏にも送付申し上げた。

以上

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