松尾クリニック
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遠隔医療・治療

「ここまできた褥瘡の治療」

JIM 第6巻 8号 1996年8月より抜粋
松尾クリニック  院長 松尾 美由起

 瞬く間に悪化してしまう褥瘡の治療は、全身状態の改善と、時期に応じた薬剤や処置に加え、早期発見と子防が重要である

ワンパターンではなくなった褥瘡治療
褥瘡の治療は従来は乾燥が第一の時代だった.しかし,創の治療には湿潤な環境が必要であることが理論的にはっきりして、ハイドロコロイド材が効力を発揮するようになった。さらにいつまでも同じ薬剤を使うのではなく、褥瘡の病態を把握し、その時期に応じた適切な治療法により、治らないとされていた褥瘡の治癒が望めるようになった。
 本稿では在宅医療を支える立場から褥瘡の治療(特に創面に対して)に関して言及したい。

褥瘡とは

 自分で体位変換できないなどの運動能の低下、知覚低下、骨の突出、浮腫、低栄養などが原因となって、 持続的な圧迫や皮膚の「ずれ」が加わって、皮膚・皮下の循環障害によって生じる皮膚およぴ皮下組織の障害をいい、ついには組織が壊死となる状態をいう。
 毛細血管や小動脈は、わずかの圧力(約32mmHg以上)で血流が低下し、閉塞し皮膚は虚血になりやすい。時には掛けていた布団の圧迫だけで褥創が生じることもある。いうまでもなく全身状態の悪化、皮膚の感染・不潔が大きな発生要因となる。褥瘡がみられたら逆に全身状態の悪化を示唆しているともいえる。

創傷の冶癒週程に影響すること
 乾燥が重要とされていたころとは全く異なり、創傷面が湿潤な環境にあると、上皮細胞の遊走が促進され 肉芽の形成も容易になることがわかってきた。
 異物、壊死組織も細菌によるコロニ―形成、感染症の原因となり治癒を妨害する。よって壊死組織の除去 は重要である。微生物汚染は感染症さえ起こさなけれぱよいのですべてを取り去る必要はない。この点から、洗浄に使用する水量およぴ洗浄の圧が重要となる。

褥瘡の洗浄・消毒

◆洗浄

 生理的食塩水を注射器に入れるかボトルに18Gの針あるいは洗浄用ノズルを付けて行う。感染があり、 滲出液の多い場合は洗浄→消毒→洗浄することもある。洗浄液を暖めておくと血行促進のためにもよい。  最近では薬剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの感染も問題になってきており、超酸化水による洗浄も期待できる。要は10Occ以上の量で洗浄することである。


◆消毒剤

 感染のある場合やポケット形成のある褥瘡に限り使用する(消毒剤には細胞毒性があり、白血球・線維芽細胞を障害し創傷治癒を遅らせることがわかっており、感染のある場合に限って使用する)。ただし肉芽形成が認められたら中止する。使用するときは創面を傷つけないように、注射器で創部にそそぎ込み消毒することもある。消毒後必ずよく洗浄する。


表1 創面被覆材


閉鎖性ドレッシング材
(ハイドロコロイドドレッシング材)

外層と内層の2層よりなる。
外層:防水性、クッション効果のあるポリウレタンフィルム。外気より遮断。
内層:ゼラチン、ペクチンなどの植物
性素材で親水性コロイドを疎水性ポリマ−が取り囲む。
作用機序:皮膚に粘着し、浸出液など
が親水性コロイド粒子に反応してゲル化。創内を湿潤環境に保ち、肉芽形成を促進 する。ゲル物質の漏れや汚染がなけれぱ7日間まで連続貼用可能。
デュオアクテイプ
治癒を促進する  赤色期・白色期
湿潤環境を作る  第1・2・3度
コムフィール
治癒を促進する  赤色期・白色期
湿潤環境を作る  第1・2・3度
水分吸収能が高い
柔軟で密着性
懐死組織除去
準閉鎖性ドレッシング材
(ボリウレ夕ンフィルムドレッシング材)
水蒸気や酸素は通すが水分は通さない。片面接着性あり、透明で貼用時の皮膚の状態が観察できる。失禁などの感染予防、生理食塩水ガ―ゼドレッシング時や入浴時に創面を保護する必要のある時に用いる。

オプサイト
水蒸気は通す   赤色期・白色期
水は通さない   第1度
テガダ―ム
疼痛抑制     赤色期・白色期
上皮再生促進   第1度
水蒸気は通す
水は通さない
バイオクル―シプ
創の保護     赤色期・白色期
疼痛抑制     第1度
水蒸気は通す   第2度
水は通さない
上皮再生促進
皮膚欠損治癒促進
ピジダ―ム
粘着面にハイドロ
コロライド材が薄 赤色期・白色期
くついている   第1度

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