● ノルウェー患者権利法 ●



第4章 医療に対する同意

4-1節 同意に関する一般規則

 医療は患者の同意によってのみ提供できる。ただし同意を得ずに医療を提供するための法的権限が存在するか、他の正当な法的根拠がある場合を除く。同意が有効であるためには、患者が自己の健康状態と医療の内容について必要な情報を受け取っていなければならない。

 患者は同意を撤回できる。もし患者が同意を撤回するなら、医療提供者は、医療を与えない場合に生じる結果について必要な情報を与えるものとする。

4-2節 同意の形式に関する必要条件

 同意は明白に、または暗黙のうちに与えることができる。患者の行為とその他すべての状況に基づき、患者が医療を受け入れていることがまず確実ならば、暗黙の同意が与えられていると考えられる。
 
 保健・ケアサービス省は、特定のタイプの医療に関連して、同意書またはその他の正式必要条件が要求されることに関する規則を公布できる。

4-3節 同意を与える能力のある者

 次の者に医療に対し同意する権利がある。
 ア)完全に成年に達し法的能力のある者。ただし特別の規定により別に指示されている場合を除く。
 イ)16歳を超える未成年者。ただし特別規定または措置の性質により別に指示されている場合を除く。

 もし、患者が身体的または精神的疾患、老人性認知症または知的障害のために、同
意が必然的にもたらす結果を理解する能力を欠くことが明らかであるならば、同意を
与える能力の全部または一部の適用を停止することができる。

 医療提供者は、患者が第2段に従い同意を与える能力を欠いているかどうか決定するものとする。患者の年齢、精神状態、成熟度、および経験に基づき、医療従事者は患者が自ら医療に同意できるよう最善を尽くすものとする。3-5節参照。

 同意を与える能力の欠如に関する決定には、決定の理由を述べるものとし、書面で提出するものとする。そして可能であれば、直ちに患者および最近親者に提供されるものとする。もし患者に最近親者がいないならば、決定は4-8節に述べるように医療従事者に提供されるものとする。

4-4節 子供を代理する同意

 親または親の責任を負う他人には、16歳未満の患者に代わって医療に同意する権利がる。

もし児童福祉機関が、児童福祉法の4-8節または4-12節に従って16歳未満の児童を保護したならば、児童福祉機関に医療に同意する権利がある。

  子供は発育し成熟するので、子供の親、親の責任を負う者、児童福祉機関(第2段参照)は、同意を与える前に、子供が言わんとすることを傾聴するものとする。子供が12歳に達しているとき、子供には自分の健康に関するすべての問題に自分の意見を述べることが許されるものとする。

4-5節 同意を与える能力を欠く青少年に代わる同意

 親または親の責任を負う者には、同意を与える能力を欠く16歳から18歳の間の患者に代わり医療への同意を与える権利がある。

もし児童福祉機関が、児童福祉法の4-8節または4-12節に従って16歳から18歳の間の児童を保護したならば、児童福祉機関に医療に同意する権利がある。

 もし患者がそのことに異議を唱えれば、医療は提供されないことがある。ただし特別の法令の規定により別に指示されている場合を除く。

4-6節 完全成年で法的能力があり、かつ同意を与える能力を欠く者に代わる同意

 もし完全成年で法的能力がある患者が同意を与える能力を欠くならば、医療提供者は程度と期間が高度に侵襲的な性質でない医療に関して決定することができる。

 患者の最近親者は第1段に含まれない医療に同意できる。もし患者にとって得策と見なされ、患者が多分そのような治療を許したであろうと思われるならば、その他の医療を提供できる。患者が望んだであろうことを決定するために、患者の最近親者から情報を得ることができる。

 もし患者がそのことに異議を唱えるならば、第1段および第2段に従う医療は提供出来ない。ただし特別の法令の規定により別に指示されている場合を除く。

4-7節 法的に無能力と宣言されている患者

 1898年11月28日の法律により法的に無能力と宣言している患者は、出来る限り最大限まで、自ら医療に同意するものとする。このことが可能でないならば、後見人が法的無能力者に代わって同意を与えることができる。

4-8節 同意を与える能力を欠き、かつ最近親者がいない患者

 医療提供者は、他の資格のある医療従事者と協議して、同意を与える能力を欠き、かつ最近親者がいない患者に対する医療に同意できる。

4-9節 患者の特別状況で医療を拒絶する権利

 患者が信念のために、輸血または血液製剤を受けることを拒絶し、継続中の絶食を中断することを拒絶する権利がある。

 末期患者には延命医療に反対する権利がある。もし末期患者が治療に関して自己の願いを伝えることが出来ないならば、患者の最近親者が同様の願いを表明し、医療従事者が独自の評価により、それが患者の願いと分かり、明らかにその願いが尊重されるべきと分かれば、医療従事者は医療提供を控えるものとする。

 医療従事者は、第1段および第2段に述べる患者が、完全成年で法的能力があること、および患者には十分な情報が与えられており、治療を拒絶することが自己の健康に及ぼす重大な結果を理解していることを確認しなければならない。

 

 

   


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