パリアティブケアは、シシリー・ソンダースという人が1960年代にロンドンのセントクリストファー病院というところで始めました。その前のホスピス運動というのは1890年頃にダブリンの聖母ホスピスというところから出発していますが、それもまたロンドンに移ってきて今日のホスピスという形になっています。
シシリー・ソンダースにしても一度はどこか専門店や本屋で見られたことがあると思いますが、またキューブラー・ロスの『On
Death & Dying(死ぬ瞬間)』という本があります。われわれ医療従事者にとってはバイブルのような本です。シシリー・ソンダースであれキューブラー・ロスであれ、あるいは日本の死生学大家である上智大学アルフォンス・デーケン教授にしても、緩和ケアというのはガン末期だけではなく障がいをもたれているあるいは老衰に近いかたちであっても末期というのは、家族だけではなく地域で看ていきましょうという主張だと思います。キューブラー・ロスはまさしくそういうことを言っています。
今から20年前に私と同じ消化器外科医出身で千葉大学の山崎章郎さんという方が『病院で死ぬ』という本を書かれてベストセラーになりました。この本にも書かれていますが、消化器外科医でガン末期の方とお付き合いしている中で真剣に悩み、現場放棄のようなかたちで、南極調査船(捕鯨の関係)に乗ったときに暇だろうと持っていった本が20冊ぐらいあったそうです。その中にキューブラー・ロスの『On
Death & Dying(死ぬ瞬間)』がありました。彼は「俺が悩んでいたのはこれなんだ。」とその本を読んで気づいたそうです。1例をいうと序章の「死の恐怖について」というところで、このように書いています。長い文章のピックアップですから誤解を与えてしまうかもしれませんがゆっくり読みます。