松尾クリニック
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プライマリケア

「介護保険で在宅医療現場はどう変わるか 」

メディカル朝日 第27巻第5号 1998年5月より抜粋
松尾クリニック  院長 松尾 美由起



介護保険制度か議論の末、国会で成立して以来、医療福祉の分野ではケアプラン、ケアマネージャー(介護支援相談員)ヘの関心が高まり、その認定試験のための情報にみんなが集中している観がある。そんななかで第5回平成患者学シンポジウム「介護保険で介護は変わるか」が開かれ、参加させていただいた。各分野の方々がリハビリテーション、サービスの提供、評価、人権、生活保護などの面々から介護保険が実施されるにあたっての問題点、課題などを握起された。私も在宅医療にかかわる開業医として、この問題を考えてみたい。


“自己的在宅憲者”の増加

 松尾クリニックでもこの5、6年で在宅患者さんの人数は約2倍に増えた。急激に高齢化が進んできたこともひとつの原因ではあるが、在宅医療の良さを認識する人カ轄えてきたことが拍車をかけ、さらに患者さんが自分が医療を受ける場を積極的に考えるようになってきたためと考えられる。一方で、なかには安易に在宅医療を希望する人も増えてきたように思う。つまり頑張れば通院できるのに在宅のほうが楽だし勧められたからと在宅医療を希望するいわゆる“社会的入院”ならぬ“自己的在宅患者”と呼んでい、いような方も増えてきた。そんな状況下で介護保険が開始されることによって、どのように介護は変わっていくのだろう。

潜在患者ヘの危慎
 確かに「要介護」「要支援」高齢者を認定していくことにより介護の提供は合理的になるであろう。しかし私は逆に“本人または家族”が市役所に申請するという段階からもれていく要介護者はいないかと心配している。13年前、保健婦から依頼されて往診にいった患者さんのことをふと思い出したからである。部屋中足の踏み場もなく、汚物の散らぱった和室をつま先で歩いて診察し、身体中に疥癬と褥瘡のある患者さんに驚いた。それまでは、まさかこの時代に、このように全く情報から埋もれてしまった患者さんがいるとは思えなかったのである。  要介護認定審査会で「介護が必要」と認定されなければ、何も始まらない。介護とは日常の生活が少しでも快適に送れるように援助することだと思うが、今まではほとんどが家族の力に頼りきり負担をかけることが多かった。私どもは在宅医療にかかわる限り、患者さんの生活・動作・精神面すべてにおいて少しでも満足が得られるようにと考え、思いつくことはすべて行動に移してきた。

在宅医療の現状
 たとえば大動脈弁閉鎖不全症と脳梗塞で寝たきりになった87歳の女性の場合は、昼間独り暮らしのため、頻繁に電話をかけて様子を聞くようにしたり、医療ソ―シャルワーカーや看護婦を頻繁に訪問させて様子を観察させ、実際に食事介助や家事介助の分野まで行い、薬剤も誰がみてもいつどのように服用させるかわかるように画用紙にサンブルを張りつけ目立つ場所に張るようにした。つまり家庭内の介護者だけでな<親戚、隣家の人にもある程度かかわってもらうように工夫した。夕方に家族が帰宅するようになると看護婦が訪問し、介護の方法を指導するというように家ぐるみでお預かりしたという状態であった。そして少しずつではあるが家族や親戚の人が介護の自立を会得していってくれたのである。

表1現在の医療制度で可能な在宅介護
訪問看護、訪問リハビリテ―ション 週3回
ホ-ムヘルプサ-ビス(公的・民間)週3回:家事援助、入浴サ-ビス
通所サ-ビス(デイケア、デイサ-ビス、リハビリテ-ション)
移動サ-ビス 福祉タクシ-、リフ卜車
ショ-トステイ、ミドルステイ
日常生活用具の給付、貸与
住宅改造
給食サ-ビス(1食につき400円、被保護世帯は250円)

 

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