
● ホームスクール(ホーム・ベイスド・エデュケーション)の生まれた背景 ●
対立拮抗
合法的な教育上の選択肢は、主として伝統的な私立学校とカトリックの教区学校に限られていた。
対立拮抗段階の到来は、教育問題にかかわる法律問題や訴訟の全国的傾向と相前後して起こった。たとえば、1930年〜1970年の間に、子どもの教育に関する親の権利と州の権利との関係に適用される法律にはほとんど変化がなく。1970年以降、州の裁判所や合衆国最高裁判所で数多くの判決が出され、親の権利や州の権利や教育の選択が取り扱われる。
1970年代になるとホームスクールのことが世間で知られるようになり、公立学校よりも上手に子どもを教育できると考える親たちに突然直面することになった学校管理者の狼狽した対応により、ホームスクールの監督や規制についての学校管理者の権限を規定する法令の曖昧さをめぐっての争いを解決するため、いくつかの州で訴訟が始まった。
法廷での対決
1970年代までに、ホームスクール訴訟の憲法上の背景を形成した訴訟が3件あった。
1972年にウィスコンシン州対ヨーダー訴訟において、アーミシュの親に8学年以降自分の子どもを教育する権利を認めた。
ホームスクールを行っている多くの親が出席義務を課す法律に異議を申し立てる裁判を起こした。ウィスコンシン、ジョージア、オハイオ州の裁判所では親たちの主張に同意し、彼らに有利な判決を下した。
1993年、ミシンガン州の最高裁判所は8年に渡って継続していたピープル対ディジョング訴訟で、「信仰上の理由でホームスクールを行っている家族に対し、生徒は州の免許をもつ教師から教わらねばならないという州の定めた必要条件を免除する」という判決を下す。
協力関係
複数の州裁判所は、ホームスクールを行っている親を制約するような教育委員会の行動を制限する具体的な命令を出し、教育委員会に対して様々な協力方法を探るようにしばしば助言している。
ソールト・レイク大都市区のグラナイト学校区はそのような学区の一つです。この学区はホームスクールが公共学校のサービスを利用する事を歓迎し、ホームスクールの子どもは図書館の資料や本を使用する事ができ、特別クラスに入ることもできる。
カルフォルニア州サンディエゴ市学区は公立学校とホームスクールを行っている親との協力がうまくいっている。カルフォルニア州がコミュニティ・ホームエデュケーション・プログラム(CHE:Community Home Educational Program)に資金を提供し、CHEは6名の教師を雇い、それぞれの教師には、約34名の生徒と3名の指導助手と秘書1名が割り当てられ、CHEはホームスクールと公立の学校との連絡役を果たすように運営されている。CHEの一員であることで、教科書が入手できたり、テスト、カウンセリング、特殊教育のようなさまざまなサービスが受けられたりしている。
統合
ホームスクールを行っている親たち相互の共感的な絆が形成され始め、ネットワークをつくり始めた。非宗教的なホームスクール団体の課題の提起は、
a)主流をなす伝統的な学校でのやり方とは異なる教育方法
b)子どもの個々の知的、社会的、心理的必要性に応えること
c)親教師たちを支持し、励ますこと
d)立法者や他の施策立案者に影響を与えること
キリスト教ホームスクール団体は、
聖書の原理に基づいて、子どもたちがキリスト教の信念に成熟するように育てるための最善の教育方法であると提起。
ネットワーク化は、地域、州、全国、国際的レベルで行われている。
宗教的な団体
ユタ州ホームエデュケーション協会(UHEA)
ユタ州キリスト教ホームスクール協会(UCHSA)
州のネットワーク団体
家族中心学習ネットワーク(FCLA)ワシントン州で創設
全国的レベル
ホームエデュケーション全米センター(NCHE)
全米ホームスクール協会(NHA)
いくつかの出版物
「家庭で教える」The Teaching Home(TTH)、1980年の創刊以来、一家族が所有し運営しているが、一地域の広報誌から購読者が約4万人、70頁の雑誌を隔月発行するまで成長。
「家族教育雑誌」Home Education Magazine(HEM)、これも一家族が創刊した定期刊行物であり、国中に配達されている。
「学校に行かないで育つ」Growing Without Schooling(GWS)、隔月発行、予約購読数が5000部を越えている。
その他いくつもの雑誌が発行されています。
国際レベルでの統合では、ホームスクール法的防御協会(HSLDA)は家庭で子どもを教育する親の権利を弁護しており、50州全部と数多くの外国のおよそ38,000人の活溌な会員を保有しています。
現在の状況
公立学校に対する親の疑念は続いている。たとえば、裁判所ではまだホームスクールについての訴訟が係争中である。また、全国的にホームスクールと公立学校との協力計画が湧き起こり続けています。
でも、将来のホームスクール施策のあり方に対してホームスクール運動がどれほど重要な影響を与えることができるかはまだ明白ではない。ホームスクールが合法性と信頼性を得ると、ホームスクールの規制はさらなる洗練と複雑さが必要になるでしょう。
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