患者会「松樹会」の活動内容

「総合的に・・・」

松尾クリニック機関誌 「松樹会ニュース」
1998年NO.20の中からの抜粋



 秋も深まってまいりましたが、皆様いかがおすごしでしょうか。いろんな自然災害にあわれた方々に心より御見舞い申し上げます。それにしても、命の尊さを弄んでいるような事件が相次ぎ、思わず首をかしげたくなるようなこの頃です。

 先日は診療室に入ってこられた方が「こんなことってあるのでしょうか?総合病院で。」と興奮しておられます。よく聞けば、親類の方が、以前「心筋硬塞」で入院して以来、5年間ずっとその総合病院に通院しておられたのですが、最近食欲が無いとのことで受診されたそうです。検査してみると肝臓癌の末期でいろんなところに転移しており、すぐに入院はしたものの2週間で御逝去なさったということでした。「総合病院で診てもらっていても総合的には把握されていないのでしょうか?」という問いに対して即座に声がでませんでしたが、こういうこともあり得ることなのだとお話しせざるにはおれませんでした。

 今の医療では内科・外科・脳外科・・・・と分かれているだけでなく、同じ内科の中でも消化器、循環器、呼吸器などと専門分野が分かれています。そのため専門分野に関しては深く広い知識をもって診療に当たるので全く問題は無いのですが、専門外の部位への対応がどうしても遅れがちになってしまうことがあります。特に悪性腫瘍、癌の場合は症状が少ないことも多く、気がつくとびっくりするくらい病変が進んでしまっていることもあります。総合的に診療しようという意志が必要ですし、更に医師同士の情報交換や連携も非常に重要なわけです。

 こういう事態を防ぐためには少しの異常でも早めに医療機関を受診し検査していくことしかないのかも知れません。しかし患者さんの側からすれば「何か異常があるといわれるのが怖いため検査を避けている」という方も多々おられます。又、医療の側からすれば先程の専門性の落し穴に加えて、昨今の医療保険の状況から医療が定額化(病気によって医療保険から医療機関に支払われる金額が一定化される制度)され、検査すればするほど医療機関にとっては経済的には困難な面がでてくるという事もいえそうです。質の高い定期的な人間ドックのような検診が必要となるかもしれせん。

最近、はじめて受診された方々に書いていただく用紙の「悪性の病気であった場合、ちゃんと告げて欲しいですか」という欄には90%位の方が「はい」と返事されています。自分の身は自分たちで守るしかありません。そして医療スタッフである私達は、常に見落としや間違いが無いか注意深く慎重に、そして何よりも謙虚に仕事をしていきたいと思っております。

松樹会ニュース 第20号より

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