松尾クリニック
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遠隔医療・治療

診療所の情報システム戦略(2)

「遠方からのテレビ電話で医師・患者が対話する
在宅患者の”不安”を軽減するシステム導入」

 

ARKRAY NETS 2001年秋号 Vol.12
医療法人 松尾クリニック


 大阪府八尾市の松尾クリニックは、1985年10月の開業以来、在宅医療と患者志向の診療活動に取組み、病診連携や診診連携、福祉・行政との連携や患者会(松樹会)の設立、ボランティアの導入など、積極的に診療所を中心として地域の医療ネットワークづくりに努めて来ました。同クリニックでは一部の在宅患者に対して、テレビ電話を利用した遠隔診療にチャレンジしています。


リアルタイムで在宅患者の状態を把握
迅速なアドバイスも可能

 
平成8年7月厚生省は、医師がテレビ電話を通じて在宅の患者を診察する遠隔医療に、健康保険を適用する方針を決めた。それに基づき厚生省の遠隔医療に関する研究班は活動を開始したが、同研究班によると、遠隔医療(テレメディシン)とは「映像を含む患者情報の伝達に基づいて、遠隔地から診断、指示などの医療行為および医療に関連した行為を行うこと」と定義されている。現在高機能病院や大学病院等を中心に、画像診断や患者紹介・診断、緊急患者のCT画像の直接伝送や、三次元CT作成の遠隔助言、他病院医局とのテレカンファレンス等、遠隔医療を巡る環境整備が急テンポで進んできた。しかしプライマリケアを主体とする開業医の場合、ハードルが高いためか今のところ導入例にまだ極めて少ないのが原状である。

松尾クリニック(松尾美由起院長)は2年ほど前から、リモートコントロール(遠隔地操作)のできるテレビ電話を使っての在宅医療を行っている。患者さん宅の家庭用テレビに移動可能なカメラを設置。テレビとクリニックのテレビ画面とを電話でつないで、直接患者さんや家族の表情・状態を見ながら話ができる。要介護者であれば、床ずれの処置や皮膚の状態も手に取るように分かるし、見たい部分を大きく拡大して見せてもらうことも可能。さらに血圧や脈拍、体温も直接テレビ電話でデータとして送ることもでき、それに加えて指先で血液中の酸素の程度がどのくらいか間接的に計った数値(酸素飽和度)も伝送できる。ハードの導入に費用がかかることもあって、現在患者さんの利用は2名に留まっている。

遠隔医療の導入について、松尾院長に次のように語る。
「当クリニックは開院以来在宅医療に力を入れており、常時50人ぐらいの在宅患者さんがおられますが、遠方の患者さんで在宅医療を希望される方がかなり増えてきたものの、物理的に在宅で十分に時間をかけて診ることができない。遠方でも在宅患者さんと毎日お目にかかって、状態をお聞きし十分に患者さんに満足していただけるアドバイスができないかと、以前から感じていたのです。」

そこで当時、開発されたばかりのテレビ電話とカメラを活用した「富士通在宅ケア支援システム」を導入した。このシステムにより、リアルタイムで在宅患者さんの状態を知ることができるし、要介護者であれば患者さんの家族やヘルパーさん対して適切なアドバイスを与え、迅速に介護の処置の仕方を教えることも可能。遠隔地の患者さんにはメリットが大きいが、一方でシステム導入に対して患者さんに経済的な負担を強いることになる。松尾院長は「できることであれば全ての在宅患者の自宅に、テレビ電話を置きたい」と前置きし、リースであれば1ヶ月5000円位かかるので、患者さん側に負担が大きくて、踏み切れないという方もおられます。また在宅の患者さんは高齢の方が多いため、機械の操作が困難な場合もあります。と強調。「遠隔診療に対して、患者の経済的負担と診療報酬上の評価のないことが、一般的な普及を阻むネックになっていることを指示する。

画面上で主治医や訪問看護婦と面談し連携を密に

 松尾クリニックは前述したように、1985年10月、近鉄八尾駅前のビルに開業。当初から(1)納得のいく質の高い診療(2)親身になった在宅診療(3)患者会(松樹会)を通じての交流と患者の側にいる医療の3つの基本方針を挙げ、地域医療活動に取り組んできた。診療科目は内科、循環器科、消化器科、放射線科を設置、さらに診療所内に訪問看護ステーション「来夢(らいむ)」を運営している。在宅医療に関しては開業時から実践しており、92年4月には「寝たきり老人総合診療科」の承認を受け、前述したように50人前後の患者に訪問診療を提供している。小規模の無床診療所でこれだけ積極的に在宅医療に取り組めるのは、訪問看護婦(訪問看護ステーション)のバックアップと、病診連携により後方病院の支援体制が確立されているからだ。遠隔診療を受けている患者さんのうち1人は和歌山の方で、お年寄りのため床ずれの状態がひどく、松尾クリニックが在宅医療を提供しているというので相談に来られた。松尾院長はクリニックから遠く離れていることから、遠隔診療システムの導入を勧め、テレビ電話を使ったケアを実証することになった。

松尾院長は「テレビ電話で常時床ずれの状態を見せていただいていますが、画面上で徐々に良くなっていかれるのが分かります。その患者さんの主治医にも、担当されている訪問看護婦さんにも画面上でお会いしますが、親近感が持て連携がより密に行えるように感じます。と、遠隔診療の実施により在宅ケアの裾野が拡がっていくことを示唆する。このシステムは患者さんのケア記録や個人情報、バイタルサイン計測情報等を観察していけるという。さらに院長クリニックでは、今年の3月から情報発信を目的に、クリニックの受付カウンター上に「プラズマ・ディスプレイ」という、大型のテレビ画面を設置した。
これはクリニックの情報、例えば診療時間の変更や新しい検査等に関する説明、病気や健康管理に関する知識や同クリニック患者会のお知らせ等、多彩な情報がコンピューターを通して大画面に映しだされる。
松尾院長はシステム化の今後の展望として、「電子カルテの導入も前向きに検討したい」としたうえで”遠隔診療システム” のような先端技術の導入により、在宅医療の場でも患者さんの”不安”を少なくできれば言うことはない」と締めくくった。

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