松尾クリニック
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遠隔医療・治療

「褥 瘡」

[検査項目]
      (1)
血清アルブミン値:アルブミン値が低いほど褥瘡の発生率は高く、最低3.0g/dL以上にしておきたい。
     
      (2)
血算:赤血球数、ヘマトクリット値、特にヘモグロビン値の低下は局所組織への酸素輸送が低下するため褥瘡の発生を招きやすい。このためヘモグロビン値は11g/dL以上に維持しておく。また、総リンパ数の低下も褥瘡発生を予測する指標となる。
     
      (3)
血糖:高血糖状態で褥瘡ができやすいのは末梢循環障害、易感染性などのためとされる。もちろん低血糖も循環障害を招きやすいので正常範囲内にコントロールする。
     
      (4)
血清鉄:低下することで褥瘡ができやすく。80〜160μg/dLを保つようにする。
     
      (5)
血清亜鉛:亜鉛欠乏により皮膚炎や味覚障害を起こすことがあり、褥瘡の原因となることがある。血清亜鉛値を70〜150μg/dLに保つ。
             
[鑑別すべき疾患]
      (1)
皮膚炎:おむつなどの当たる部位で湿潤・汚染により起こるものを褥瘡と間違えやすい。常に圧迫があるかどうか、また骨の突出した部位かどうかなどからも判断できる。
     
      (2)
低温やけど:あんかなどに当たっている部位や簡易カイロなどで起こり、発赤や水疱形成、皮膚潰瘍を呈する。
     
      (3)
動脈硬化性閉塞症による皮膚潰瘍:末梢循環障害があり、皮膚の色調が紫色や白色になっていることが多い。末梢の脈の触診あるいは末梢血流ドプラ検査で血流障害が判定できる。
 
[専門医への紹介のポイント]
  広範な壊死組織の除去(デブリードマン)が必要なとき、あるいは上皮形成が進まず縫合や手術を行ったほうがよいときは皮膚科、形成外科などに紹介する。
             
治療・生活指導
 
             
[治療方針と到達目標]
 
栄養状態、全身状態の改善とともに、褥瘡の成因となる持続的な圧迫、摩擦、ずれなどを除去する。また、時期に応じた治療を選択することで褥瘡は治るものである。
         
 
[行動科学的アプローチ]
  ■栄養状態の改善
   必要な摂取カロリーは25〜30kcal/kg/day程度である。特に前述のように血清アルブミン、血清鉄、血清亜鉛などが不足しないようなバランスのよい食事が必要で、補足のために半消化器栄養素(アイソカル、エンシュアリキッド、ハーモニックなど)を使うのもよい。
   
  ■除圧
      (1)
体位変換を2時間ごとに行う。
         
      (2) 減圧用具を使う。エアマット、ウォーターマット、体圧分散ベッド(褥瘡予防用のベッド)などを使用する。
         
      (3) ギャッジベッドの挙上はせいぜい30°くらいとし、頻回に上げ下げしないようにする。
         
      (4) エアマットなどの圧を適切にしておく(マットの下から指で骨突起に触れる程度)。
         
  ■皮膚と清潔に保つ
   皮脂のとりすぎを避けるため、弱酸性の洗剤などを使ってそっと拭く、尿や便の失禁で皮膚炎を起こしやすい状態には撥水性のクリームなどを塗布する。
 シーツなどは吸水性・熱放散性のものがよい(体位変換用マットなど)。
         
[治療]
 
 褥瘡の治療のポイントは、(1)時期に応じて治療薬などを変えていくこと、(2)壊死組織を取り除くこと、(3)よく洗浄することにある。ここではおもに色の分類に応じた治療法を述べる。
         
      (1) 黒色期
 黄色の壊死組織(痂皮)を取り除く。これには外科的に除去する方法と、蛋白分解酵素剤(バリダーゼ局所用、ブロメライン軟膏、フランセチン・T・パウダーなど)を塗布し、壊死組織を除々にとる方法がある。痂皮と周囲の組織が分離していない場合は、酵素剤などの使用後、分離した時点でハサミまたはメスで取り除く。
         
      (2) 黄色期
 黄色の壊死組織や不良肉芽(滲出液が多く感染しやすく、上皮形成をしにくい肉芽)を取り除く、滲出液が多いので(1)に述べた酵素剤以外に吸水性ポリマー(デブリサン、カデックス、デクラートなど)で滲出液を吸収、壊死組織を除去する。感染に対してはゲーベンクリーム、ユーパスタ、ソアナースなどの抗菌薬あるいは消毒薬入りの外用薬を用いる。
         
      (3) 赤色期
 赤色のよい肉芽の増殖形成のため、オルセノン軟膏、ソルコセリル軟膏、リフラップ軟膏を用いる。また、創内の湿潤環境を保つことで上皮細胞の遊走が起こり上皮化の促進となるので、ハイドロコロイドsレッシング材(コムフィールアルカス、デュオアクティブなど)、アルギネートドレッシング材(カルトスタットなど)を用いる。ただし、これらの創面被覆材は、感染がある場合には創を閉鎖することにより菌の温床になるので使ってはならない。肉芽が盛り上がってくれば上皮形成を進めるアクトシン軟膏、プロスタンディン軟膏などを用いる。
         
      (4) 白色期
 上皮化を促進するためにアクトシン軟膏、プロスタンディン軟膏などを使い、創面被覆材やポリウレタンフィルム(テガダーム、オプサイドなど:水蒸気や酸素は通すが水分や細菌は通さないフィルムで密着性がある)で外部からの保護および創内の湿潤環境を保つ。
         
      (5) 感染がある場合
 ときに消毒し(消毒薬:イソジンなどは消毒効果は大だが、細胞毒性があるので常には用いない)、よく洗浄する。消毒薬の入った軟膏などを使用し、周囲組織の炎症などを伴う場合は抗生物質を全身投与する。
         
      (6) ポケット形成の場合
 生理食塩液やバリターゼ局所用を染み込ませたり、外用薬を塗ったタンポンガーゼを創内に詰める。
         
      (7) 水疱がある場合は潰さずに、保護のためにポリウレタンフィルムなどを使う。
         

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